いきなりですが、厳選採用という言葉をご存知でしょうか?

リーマンショック以降の就職氷河期に言われ始め、意味は文字通り「厳しく選び採用する」ことです。

採用が難しくそもそも応募自体が少ない中で「厳選採用」を行ったら、採用できなくなるのではと感じられる方も多いかと思います。
しかし、応募者が採用基準に満たしていなくても妥協して採用するとどのようなことが起きるでしょうか。

求めているパフォーマンスを発揮できず、周囲との距離が生まれ、医院全体の雰囲気を悪くする場合もあります。
最悪の場合、他のスタッフへ悪影響を及ぼし退職者を生み出すこともあります。
だからこそ、医院の発展を考え、妥協するのではなく、「厳選採用」に採用の戦略をシフトし厳しい目で応募者を判断することが重要です。

 

そこで厳選採用を成功させるための戦術を医院側の視点でお伝えいたします。

まずこれまでの求人サイト、求人誌やハローワークに求人案件を出し、応募者を「待つ」採用では反応が少なくうまくいっていないとお聞きするケースが増えてきております。
その場合は、自ら人材を獲得する「攻め」の採用を行う選択肢を持つ必要があります。

そこで、攻めの採用を行うための方法を2つご紹介します。

1.リファラル採用

「リファラル採用」は現在働いているスタッフさんの友人・知人の紹介・推薦を受け採用を行う手法です。

採用に繋がった場合に紹介・推薦を行ったスタッフさんに手当を、入職する方には入社祝いを支給する制度を導入し、積極的に紹介・推薦を行える環境づくりを行っている企業もございます。

但し、「リファラル採用」には紹介・推薦を行ったスタッフさんの意向を考慮して仕方なく採用してしまうことも少なくありません。
その為、採用基準を自院で明確に設定した上で行うようにしましょう。

2.人材紹介会社の利用

人材紹介会社の報酬体系については以下のようなものがございます。

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「人材紹介会社」は、人材の紹介を受け面接を行い採用となれば、おおよそ「年収×25~35%」を手数料として支払うプロジェクト方式と、一定期間集中して紹介を受け、採用の成否に関わらず手数料を支払う場合の2種類があり、前者を基本的に推奨いたします。

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人材紹介会社と聞くと、紹介料が高いので抵抗感のある先生もおられるかもしれません。

しかし、紹介料が発生するのは採用が成功した場合のみです。
さらに採用後、概ね3ヶ月ですが、早期退職の場合、紹介料の返金を受けることができます。
最近では、掲載だけではなく求職者に「スカウト」ができる機能もあり医院側から積極的にスカウトを行うことで採用に結び付くケースが増えております。

一方で、求人誌は採用の成否に関わらず掲載料が発生します。

実際に最近では、「反響が少なかったから」とずるずると掲載料を払い続けている医院様も少なくありません。
紹介料は一度に動く金額が大きいですが、支払うのは採用できた時のみです。掲載をする媒体によっては、ずるずると掲載料を払い続けた累積の金額と紹介料を比較してみると、紹介料の方が安く済むというケースも多くあります。

さらに、人材紹介会社は面接日程の調整や内定後から入職までのフォロー、求人情報の整理等、採用に関するあらゆることをサポートしているので、求人誌の掲載に比べて、医院側の負担が少ないことも特徴的です。

また、人材紹介会社は文字情報だけでなく自院の雰囲気や先生の人柄なども面接前に伝えていることもありますので、求職者が前向きに自院のイメージを膨らませてもらえる場合もあります。

 

続いて、採用手法の次に重要なことは募集をかけるタイミングです。
特に常勤の採用においては、医院にも繁忙期があるように求職者数の動向にも大きく分けて2つの波があります。

1つ目の波は、4月入職を目指した波です。具体的な時間軸を説明すると、年末年始の休みを利用して動き始めます。
おおよそ12月末から応募を始め、早ければ1月中旬から面接を行い、2月末までに退職を申し入れ、3月末退職、4月1日入職という流れです。

2つ目の波は、9~10月入職を目指した波です。こちらは夏のボーナス後から動き始めます。
6月末から応募、7~8月に面接を行い、内定が出次第、退職を申し入れ、9月1日や10月1日に入職する流れです。

急な採用が必要な医院はすぐに対応する必要がありますが、長期的な視点での採用を検討されている医院では、この2つの波を念頭に求人案件を公開されるのがよいでしょう。

 

最後に、自院をPRするテクニックとして、求職者は求人情報のどこを見て、応募の判断を行っているかをお伝えします。

求人案件公開のタイミングは12月末、6月末にした方がよいと先述しましたが、当然他の企業・医院も同じタイミングで公開してきます。たくさんの求人案件の中に貴院の情報が埋没することを防ぐためには求職者の観点を知っておく必要があります。

今回は、知名度がありどんな仕事をしているのかわかりやすい企業や通院したことがある医院に応募するといったケースではなく、近所にあったのは知っているという程度の自院のイメージが出来上がっていない求職者をターゲットにしています。

当然ですが求職者は、給与等の労働条件面を始めに見ます。
条件面については給与、勤務時間、残業時間、休日などのどの点を重視するかは個々人にばらつきがありますが、よほどの差(例えば給与が月3万円違う、勤務時間が1時間以上短い等)でなければ、他院や企業と比較して、条件面において差別化をすることは簡単ではありません。

それでは、求職者は条件面の次に応募の判断を行っているかというと、実は貴院の特徴・文化が求職者の応募の判断基準となっている場合も多いにあります。

具体的には、「どんなタイプの人が働いているのか」、「やっていけるだろうか」と言った疑問も解消することや、「働いている姿が想像できる」といったポジティブな感情を生み出し、「貴院で」働きたいから応募してみようと求職者に感じてもらうことが重要です。
条件ではなく、特徴・文化に惹かれた方は、医院に溶け込みやすいため採用後の定着率も高く、成長も期待できます。

反対に、条件面だけで判断し応募された方は、医院の文化に自分が合っているのかを深く考えず応募していることが多く、考え方に大きなズレがあり、採用に至った場合には条件以外に医院への愛着が湧きにくく、些細なことが不満につながり、早期退職するリスクが発生します。

まとめると、求職者自身が働いている姿をイメージできる情報が応募の判断において大変重要な要素となります。

自院の特徴・文化について、院長先生とスタッフさんとでは視点が異なりますので、在籍しているスタッフさんに、「なぜ応募しようと思ったのか?」、「働いてみての印象はどう?」等、普段の会話の中でさりげなく聞いてみるとよいでしょう。

何人かに聞いた中で共通する部分が貴院の採用における強みです。

この強みを紹介会社の担当者と共有することで、求職者への案件紹介の際に他院との差別化がより図られ、応募される可能性が上がります。

 

今後も採用難の流れは続くと思われます。
これまで敬遠しがちであった紹介会社も、先生やスタッフさんが費やしてきた手間、採用が成功するまで費用がかからない事を考えると一つの選択肢としてご検討いただく価値があるではないでしょうか?

 

紹介会社との付き合い方も含めて、自院の採用力の強化につなげていただければ幸いです。