小売り業界では、競合店の増加によるオーバーストア化(店舗過剰)やECサイトの伸長により、集客が厳しくなってきております。
そこで、自店の取り扱いカテゴリーを増やすことで、便利さの訴求やいわゆる「ついで買い」を誘発し、買上点数を増やすことにより客単価UPを図りました。

 

例えば、ドラッグストアという業態は、元々医薬品のみを扱っていた薬局が日用品や文房具だけでなく、食品や生鮮食品など品ぞろえを増やしていくことで他業態が売上を落とす中で店舗数を増やし売上も増えております。

また、コンビニエンスストアはもともと日用品や食料品を取り扱っていましたが、宅配便の取り次ぎサービスや公共料金収納代行サービス、銀行サービスの他、ゲームやコンサートチケット販売など時代のニーズの変化と共に、取り扱う商品やサービスを増やして、より便利なり売上を増やしております。

 

この「ラインロビング」の発想をクリニックに当てはめてみますが、小売業ではなく医療業界ですので、「奪う」という発想ではなく、新しいことに取り組むことにより、1つのクリニックで多くのサービス(治療)を受けることができ、患者がより便利になるという発想をお持ちいただきたいと思います。

具体的には、

・現状の診療メニューに、別の診療メニューを追加する。
・専門外来を付加する
・予防医療(自費)を付加する
・特定の診療が得意が医師に勤務してもらう
・他科の付加も場合により検討

といったことができるかと思います。

一例を挙げますと、自院の経営戦略の柱の一つにアレルギー性鼻炎の患者の治療を据えるとした場合、

・舌下免疫療法、レーザー治療の訴求
・花粉症ではゾレアを追加
・点眼処方も対応する旨の訴求
・ドロップスクリーンなど負担の少ないアレルギー検査機器の導入
・喘息などの管理対象の拡大
・アレルギー科の標榜
・製品を吟味した上でのサプリメント販売

上記のような診療領域、メニューを追加することで様々なニーズに応えたり、周辺の疾患領域にも範囲を広げていくことが可能で、従来のターゲット以外の層の取り込みや、従来の保険診療収益以外の収益の柱を獲得することができます。

しかし、「ラインロビング」戦略を取る上で注意しなければならない点があります。
それは、間口を広げ過ぎると何に特化したクリニックかわかりにくくなり、自院のブランディングが失われ、差別化がしにくくなりメインの患者層が離れてしまう可能性があるので、自院の強みを明確にしながらメニューのバランスをとることが重要です。

 

患者のニーズは大きく変化しており、新しい治療メニューも昔は医療関係者しか知らなかったことも、インターネットやSNSの発達により一般の患者さんも知ることができる時代になりました。

これらの変化に対応するために、定期的に自院の特徴と親和性の高い治療メニューや自費診療などの取り扱いをご検討ください。