マーケティングの4Pとはジェローム・マッケーシーが、『ベーシック・マーケティング』(1960)で提唱した概念で、マーケティング活動を行ううえで押さえておくべきフレームワークになります。

  • Product(商品)
  • Price(価格)
  • Place(販売チャネル・流通)
  • Promotion(広告・販促)

これら4つの頭文字を取って4Pと表現しています。これを耳鼻咽喉科に当てはめると、

◆Product(商品)

 

どういう治療を行っているのか

他院と差別化を図る治療を行っているか

商品については耳鼻咽喉科医院では診療メニューに当てはめることができます。他の耳鼻咽喉科に比べて差別化要因となりやすい

  • レーザー治療
  • EAT(Bスポット療法)
  • 舌下免疫療法

など、以前から存在する疾患に対する診療メニューはもちろん

  • 常時内視鏡を用いた見せる治療
  • 耳鼻科と小児科の専門医による 1院2科目診療

など、特定の疾患に対する診療ではないが「付加価値としての診療スタイル」も耳鼻咽喉科医院においてはProductと考えてよいでしょう。

◆Price(価格)

 

提供する診療の費用(負担額)が他院と比較して妥当か、リーズナブルか?

現金以外にクレジットや電子マネーなど支払いに複数の選択肢があるか

価格設定については、

1.保険診療

患者さんが積極的には望まない、検査や頻回な通院の指示がある場合には、通院の手間だけではなく患者さんの自己負担額が増えることとなり、患者さんからは敬遠されやすくなります。

2.自費診療

導入している耳鼻咽喉科医院と導入していない耳鼻咽喉科医院に分かれますが、自費メニューの選択肢が少ない診療科目である耳鼻咽喉科で重要となるのは、インフルエンザワクチンの価格政策です。

ニーズが大きいから価格は下げないのか、ニーズが大きいからこそ接種しやすい価格にするのか、各院において戦略が分かれることとなります。

◆Place(チャネル・流通)

 

オンライン診療や電話診療など社会情勢に対応した診療体制を有しているか

診療時間は医院のターゲットとなる患者層ニーズとマッチしたものになっているか?

立地という意味もあるのですが、既に開院済みの先生方が多いため、流通をメインにお伝えすると、流通とは、ここでは患者さんに医療を届けるまでの経路や手段を意味します。

例えば、患者さんが受診できる診療時間について、
1.ビジネス立地であれば仕事帰りの方を見据えて診療終了の時間帯を遅く設定する

2.高齢者比率が明らかに高く、正午前後は患者数が落ち着いている住宅立地であれば、
予約の苦手な高齢者に配慮し、診療開始時間直後は順番予約を取らず、医院での
来院順とするなどが挙げられます。

外出が難しい高齢者の増加などにより、オンライン診療や訪問診療など医療の提供の仕方にも多様性が求められてきています。

◆Promotion(広告・販促)

 

患者さんに自院が行っている取り組みや疾患流行情報等の情報発信を行っているか

認知拡大のために看板やホームページなど広告費に費用をかけているか

販促とは、販売促進の略ですが、耳鼻咽喉科医院においては、自院の特徴や治療内容といった強みを看板やホームページなどの媒体を使って認知拡大を図ることです。
また、昨今ではSNSなどを用いて情報発信をしている医院が増加しています。
Product(商品)分野におけるいくら専門的な治療を行っていても認知されなければ意味がありません。
自院の強みを知ってもらうために医院側から情報発信を行うことの重要度は日々増してきています。

 


これらのように、マーケティングの基礎である4Pは耳鼻咽喉科でも当てはめることができます。
また、「誰に対して」「目的は何か」という概念を加えることで、より具体的なマーケティング戦略を
立てることが可能になります。

マーケティングは、患者数の増加・安定的な収益を得る上で非常に重要になります。時には周りの耳鼻咽喉科医院を参考にするだけではなく、全く関係のないビジネスや、今回の4Pのようなフレームワークを利用して自院のマーケティング力について考えてみることも必要ではないでしょうか。

今回のテーマがそのきっかけになれば幸いです。