従来ならば、毎年11月ごろから急性疾患で
徐々に患者数が増加していき、
その流れで花粉症患者の増える繁忙期へ
移行していたため、繁忙期への準備が
うまく進んでいた状況もあるかと思います。
しかし、急性疾患を理由に受診する患者数の減少が続く懸念もあり、
今後は閑散期から「徐々に」ではなく、「急に」繁忙期になるという状況を
繰り返す可能性があります。

今回のような状況であっても、診療時間を延長しないで多くの患者対応をした医院と、
診療時間を延長していた医院では何が違うのでしょうか。

それはズバリ、日頃から繁忙期への備えが、医院全体でできているかです。

「医院全体で」というのは、先生一人が頑張って診療を早くするということではなく、
スタッフを含めて繁忙期を意識した準備を進められているかということです。

 

そのカギは、繁忙期が終わった4月からの取り組みにあります。
繁忙期に比べて患者数の少ない閑散期に、一安心するのではなく、
スタッフ一人一人のレベルアップを図ることが繁忙期への備えとなります。

さらに、4月は一般的に人事が大きく動く時期でもあります。
そのためクリニックによってはご主人の転勤などを理由にベテランスタッフが退職し、
診療効率が大きく低下したり、診療以外の業務で院長先生の負担が増加しているところがあるようです。
ベテランスタッフの退職によって発生するこれらの弊害は、
できるスタッフに頼ってしまっていることが原因です。

詳しく説明致しますと、教育計画を作成せずに、
仕事がよくできるスタッフに様々なことを任せている内に
他のスタッフができない業務が増えているということです。
このようによくできるスタッフしかできない業務が増えてしまうと、その方が退職した後、
他の方では対応できず結局院長先生が対応せざるを得なくなり、診療効率が低下したり、
診療以外の業務で院長先生の負担が増えます。

例えば、

「診療においては患者さんへの説明をベテランのスタッフに任せていたが、
その方の代わりに説明をできる方がおらず先生が説明されることで効率が低下する。」

「返戻・減点への対応やシフト組を担当していたスタッフが退職し、
他の方が対応できず先生が対応せざるを得ない。」

などです。

 

このような状況に陥らないように今の内から、どのスタッフがどの業務をできるのか、
リストにして可視化することで業務レベルの均一化を図りましょう。

そして、スタッフ毎の対応可能業務が可視化できれば後は教育をするだけです。

教育にあたっては“一方的に”「これからこの業務をやってもらうから〇〇さんに教えておいて」と伝えても、
教える側も教わる側も「仕事を増やされた」と感じるだけです。
そうならないためにも、「なぜ、教えるのか」「なぜ、その業務を覚えるのか」
をしっかりと言葉にしてお伝えしていただきたいと思います。

例えば、

教える側には
「この仕事はあなたしかできなくて負担がかかっていると思うから、
みんなができるように教えてあげて欲しい。」

教えられる側には
「この仕事は、〇〇さんしかできなくて、〇〇さんが休みを取りづらいから、
みんなでできるようになって欲しい。」

など、“なぜ”を明確にしてあげることで、そこに納得が生まれ教育する側もされる側もモチベーションが生まれます。
モチベーションが上手く醸成できれば後は、3つの段階で教育をしましょう。

 

 

1.まずはやって見せる

手順を説明しながら実際にその業務をやってあげましょう。
特に重要な点は「ここ重要だから覚えておいてね。」などと声をかけながら教えてあげると効果的です。
また、メモの準備ができているか、メモをきちんと取れているかも適宜確認してあげましょう。

一通り手順を見せた後は、メモを見ながらで結構ですので、
教えられる側が手順を説明できるかチェックしてください。
ここでスムーズに説明ができなければ再度レクチャーをしてあげてください。
スムーズに手順が説明できるようになれば実際にやらせてみましょう。
実際にやらせてみる際にも行動に移す前に手順を声に出させ、知識の定着具合を確認します。

 

2.声にだしてみる(説明)

業務が完了したら重要なポイントを声に出して説明をさせます。
この時に一緒にその業務を習得する意味を声に出させることで、
自分がこれから果たすべき役割を認識するようになりますので効果的です。

 

3.評価をする

業務の一連の流れがスムーズにいくまで繰り返し手順を教えます。
スムーズに業務ができるようになれば、しっかりと承認(ほめる)してあげましょう。

このように教育をする際は、一方的に知識を与えるのではなく、
教えたことを説明させるようにしましょう。
そうすることで業務の習得具合を図ることができますし、知識の定着も促進されます。

 

また、声に出さずとも教えてもらった後で、その業務のマニュアルを作成させることで
習得具合の確認と定着を図ることができます。マニュアルを作成するとなると、
完璧にその業務を理解していないと作成できませんので、声に出させるより効果的です。
ですから、マニュアルを作成していないのであれば、教育を兼ねてマニュアル作成をされると良いと思います。

4月からマニュアルを作成することで閑散期にスタッフが手持無沙汰になることを防ぎ、
新卒採用を行っているクリニックであれば10月からパートとしてクリニックに入職する
新入職員の教育に活用できます。

 

ピークとなる3月を今年も無事乗り越えたと単に一息つくのではなく、
マニュアルをバージョンアップして来年の繁忙期を迎える為にも
教育の仕組みづくり」へのアンテナを4月から立てていきましょう。