それまでの返済の開放感からか、(あるいはご子息ご令嬢の学費の工面もあるのかもしれませんが、)余った資金の大半をご自身の報酬として受け取るようになってしまうのです。
(医療法人で利益を余らせ続け、何の目的もなく留保金がどんどん溜まっていくのはもっと性質が悪いのですが、そのお話は今回は割愛させて頂きます。)

 

弊社のコンサルティングのスタンスとしては「なるべく院長先生やご家族にしっかりと収入を得ていただく」ということを重視していますが、それとは別にお願いしたいのは「自院の将来への投資」なのです。

自院への投資と聞かれると医療機器の購入をまずは頭に浮かべられる先生が多いでしょうが、自院への投資はそれだけではありません。
重要なことは「医院が古くなった」と見られないための取り組みです。

 

耳鼻咽喉科の経営は、ある意味で「装置産業」ともいえる側面も持っています。

端的に言うと、
常に新しい医院が誕生する中で、(よほど腕が良いと評判の耳鼻咽喉科ではない限り)古ぼけた設備・内装の医院には次第に足が遠のく(特に新規患者さん)のです。

繰り返しになりますが、これは何も高い医療機器を常に買ってください、という意味ではありません。

床がギシギシ鳴ったり、
ネブライザーのホースやノーズピースが黄ばんでいること、
レントゲン室の設備が古いことを
患者は敏感に感じ取り、「もっと新しくて綺麗なところで治療を受けたい」と思うのはごく自然な流れであるといえます。

そしてその「もっと新しくて綺麗なところ」はインターネットで検索をするとすぐに見つけられる世の中になってしまいました。

 

さらに問題は少しずつ患者さんが減ってきたことにも気づかず、
そして院内の改装や設備のリフレッシュをすることなく、
それが十数年経ってしまうと、
その環境に慣れてしまい、「まだ使える」という【勿体無い精神】「患者が減り使える資金が限られているから」という【コスト意識】が組み合わさり、古くなったものを何とか大事に使ってしまい、益々の悪循環に陥ってしまうのです。

(古くなったものを大切にすること自体はとても良いことだと思います。ただし、その事と患者側から見た医院の清潔さや新しさなど、受ける印象とは分けて考える必要があるのです。)

弊社が耳鼻咽喉科の先生からご相談をお受けする際に「患者数が減って数年が経つ」という先生のお話を聞き、その先生の医院を拝見すると、多くの場合が上記のようなケースが多く、医院の内装や設備様々な面の老朽化が目に付きます。

患者数が減り始めてからの時間が経てば経つほど、その減少に歯止めをかけるのに時間がかかるのです。

 

患者数減が内装や設備だけが原因ではない場合もありますが、こちらとしても
「余裕があった時期に、もう少し早く対策(院内への投資)を行っていれば・・・」
と歯がゆい思いをする場合があります。

耳鼻咽喉科の先生方は、設備投資などの概念(特に内装や医療機器以外の設備に対して)が希薄であるために、このような状況が生まれてしまっているのです。

 

10年に1度は壁紙や床などのリフォームをされたほうが良いでしょう。
(できれば5~7年に1度くらいが理想です。)

①設備
②ドクターやスタッフ
③診療スタイル

について「古くなった」という印象を持たれることの無い様にして頂ければと思います。

売上のうちの一定の比率で、院内のリニューアルや医療機器への投資を計画的に行うようにしていただくと良いでしょう。

 

イソップ物語の中で、最終的にキリギリスはアリに助けられるのですが、院長先生方はなかなかアリの助けを借りられそうにはありません。
永続する医院作りのためには院長先生自身がアリとなって、10年、20年先のことを見越しながら経営を行っていかなければなりません。

 

1つの組織を10年継続させるのは並大抵のことではありませんが、それでも100年以上にもわたって続いている企業は日本には沢山あります。
そういった企業は多くの場合目先の利益に囚われずに、今の組織が何十年後も永続することを念頭に将来に向けた経営を行っている場合が多いようです。
まさにアリの経営ですね。

 

そのような企業がどのような取り組みをしているのかを学ぶことは異業種ではあっても大変参考になると思います。

 

継承していただくご家族(お子さんやご親戚など)や、後輩がいるかどうかは別として、常に「この医院を継ぎたい」と思ってもらえるような耳鼻咽喉科であり続けて頂くためにも、「継続の遺伝子(仕組み)」が自院の中に組み込まれているかどうかを今一度再確認して頂くのも良いかもしれません。