このロックイン戦略は、医療業界問わず、様々な業界や企業で活用されています。

例えば、昼食にラーメンを食べたいと思った時、A店とB店という2つのラーメン屋が思い浮かんだとします。
その時は偶然B店の100円割引クーポンを持っていたので、試しに食べに行ってみます。
すると、帰り際に、またクーポン券をもらいました。
せっかくクーポンをもらったので、次回もB店にラーメンを食べに行くことになりました。

そして、最終的にB店の常連となり、ロックイン完了、となるわけです。

航空会社のマイレージサービスでマイルを貯めることができる仕組みも、ロックイン戦略の代表的な事例です。

それでは、クリニックではどのようにしてロックイン戦略を活用できるでしょうか。

患者さんをロックインするには「自院を継続通院する方がお得」という状況を如何にして構築するかが大事になってきます。
そこで、比較的クリニックで多く活用されているロックイン戦略の代表的な手法を3つご紹介いたします。

【ロックイン戦略の手法】
1:特典やポイント制の導入
2:利便性を高める
3:ブランド力を高める

 

1:特典やポイント制の導入

こちらは、かかりつけの患者さんだけの特典やポイント制度を用意して、継続利用を促す方法です。

例えば、LINE公式アカウントにご登録いただいている方へのインフルエンザワクチンの早期予約特典などが該当します。
特典を配布したり、自費診療にポイント制を導入したりすることで、患者さんの中に「特典/ポイントを無駄にしたくない」という心理が生まれるでしょう。
それを利用することで、自院への来院を促すというわけです。

 

2:利便性を高める

診療や、それに付随するサービスの利便性によってロックインする戦略です。

例を挙げると、専門外来の設置や診療内容の拡充などが該当します。
「このクリニックを受診すれば必要な検査や治療を全て受けられる」という状態を作ることで、患者さんを囲い込むことができるのです。

また、“患者さんが必要としている時に必要なものだけを提供する”という観点も大切です。
鼻水吸引を希望される方には、予約なしで来院してもすぐに処置を実施してあげる。
毎年花粉症で来院している患者さんには、事前の問診をしっかり行う、あるいはWEB問診を活用することで、診察が短時間で済むようにしてあげる。

このように、継続的に通院いただいているからこそ、患者さんがより恩恵を感じることができる仕組みを構築することがロックイン戦略の秘訣です。

必要な時に必要な分だけを補填する「富山の薬売り」のビジネスモデルも、このロックイン戦略の利便性を高める典型例といえます。

 

3:ブランド力を高める

こちらは、自院で提供する医療やクリニックへの信頼感・イメージ=ブランドによってロックインする手法です。

「○○クリニックといえば、▲▲の治療だよね」というように、ロックインされた患者さんは、有事の際に自院を純粋想起してくれるようになります。

この作用を活用した事例としては、以下のような取り組みが挙げられます。

① オンラインでの情報発信
クリニックのホームページやブログでの専門的なコンテンツ発信により、患者さんに自院の専門性や診療姿勢を認識していただけます。

疾患別ページ:「慢性中耳炎の治療について」「小児の滲出性中耳炎とは」など、患者さんが知りたい情報をわかりやすく解説
院長コラム:診療で大切にしていること、最新の治療法に対する考え方など、医師の人となりが伝わる内容

② オフラインでの情報提供
院内で配布する医院案内パンフレットも効果的なブランディングツールです。
特に専門外来を設けている場合、例えば「めまい診療のご案内」といった専門領域に特化した医院案内を作成し、該当する患者さんに配布することで、自院の強みを印象づけることができます。

また、専門外来に関する情報を手に取れる形で提供することで、患者さんは自宅に帰ってからもじっくりと内容を確認でき、「このクリニックは専門的で信頼できる」というイメージが定着します。

さらに、患者さんが家族や知人に「めまいで困っている人がいたら、このクリニックがいいよ」と紹介する際にも、パンフレットを手渡すことで具体的な情報とともに推薦できるため、口コミによる新患獲得にもつながります。

このような継続的な情報発信により、オンライン・オフライン両面から患者さんの中に自院のブランドイメージを構築し、ブランディング効果を生むことが期待できます。

いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介したロックイン戦略は、一度のアプローチで完結するものではなく、患者さんのニーズや地域特性を踏まえた継続的な取り組みが必要です。
また、単に「囲い込む」のではなく、「選ばれ続ける理由」を提供し続けることが、真の患者満足と経営の安定化につながります。

「自院に合ったロックイン戦略をどう設計すればよいか分からない」
「すでに実施しているが、期待した効果が出ていない」
このようなお悩みをお持ちの先生には、貴院の診療スタイルや患者層を分析し、実践可能で効果的な戦略をご提案しますので、お気軽にお問い合わせください。