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2023.12.15

クリニックが知っておくべき電子帳簿保存法

本記事は「クリニックが知っておくべき電子帳簿保存法」について、クレドメディカルの西山が医師のために税理士監修のもと記載した文書です。
より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。

 

 

 
この記事の監修者
クレド税理士事務所 代表税理士 後藤 景氏

AGSコンサルティング、AGS税理士法人にて、国立病院機構の会計監査・上場企業税務顧問・事業承継対策・相続対策を中心に従事。また、メガバンクに事業承継アドバイザーとして出向し、年商500億円規模の会社や医療法人・クリニックの事業承継案件を多数担当。
現在は、クレド税理士事務所の代表税理士として、クリニック向けの税務サービスや、相続・事業承継対策業務を中心に行っている。

 

 

2024年1月1日より電子帳簿保存法の改正内容が施行され、メールで送受信した見積書や領収書、WEB上で発行された請求書等のデータを、紙ではなくデータのままクリニック内で保存・管理する必要があります。
本コラムはクリニック向けに電子帳簿保存法の概要や電子帳簿保存法に違反しないために実施すべき具体的な対策についてお伝えします。

 

<目次>

  1. 電子帳簿保存法とは
  2. 電子取引の対象となるものは?
  3. 電子帳簿保存法に違反しないためにクリニックで何をすればいい?
  4. まとめ

 

1)電子帳簿保存法とは

 

電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿書類について電子データ形式で保存することを認めた法律です。
データの保存方法は主に3つに区分されており(図1)、そのうちの「電子取引」においてデータの保存・管理が2024年より義務化されます。
この法律はほぼ全てのクリニックに適応されるため※1、義務化に伴う対策をまだ実施されていない場合は、是非これから紹介する対策を実行してみてください。

 

※1「自院で作成する書類は紙媒体のもののみ、取引先とも紙面の書類でしかやり取りしない」というクリニックは対象外になります。

 


図1. 電子帳簿保存法の保存区分

 

 

2)電子取引の対象になるものは?

 

クリニックでの電子取引を具体例で挙げると、以下のような例があります。

・Amazon等での物品発注※2

・Google広告やYahoo!広告等のネット広告の出稿

・HP制作業者や卸さんとのメールでのやり取り

等で、Webサイト上にアップロードされた領収書やメールに添付された見積書および請求書等が電子取引データに該当し、電子帳簿保存法に則った管理・保存が必要になります。

 

上記のWebサイトやメールから請求書等をダウンロードする例の他に、クラウドサービスを用いての受渡し、クレジットカード利用明細や交通系ICカードの利用明細の取得、ペーパレス化されたFAX、USBなどの記録媒体を通しての受渡しなどが電子取引の対象になります。

 

※2 ECサイトでの電子取引に関しては電子データ保存に関する緩和条件が提示されています。
但し、全てのECサイトに適応されるわけではないので、サイト運営側にご確認いただくことをお勧めします。

 

3)電子帳簿保存法に違反しないためにクリニックで何をすればいい?

 

電子帳簿保存法に違反しないためには、クリニックで以下3点のことを実施していただく必要があります。

①電子取引のデータ(電子取引データ)の保存・管理体制の整備
②事務処理規定の作成
③スタッフを含むクリニック全体への周知

以下に①~③の具体的な内容をご説明します。

 

①電子取引のデータ(電子取引データ)の保存・管理体制の整備

電子帳簿保存法では、電子取引データを保存するだけでなく、保存したデータを検索・表示できるよう管理しなくてはなりません。

これまで顧問税理士に電子取引データを用紙に印刷して郵送すれば終わり、という先生もおられたかと思いますが、電子取引データの保存および管理義務はその取引をした当事者、つまりクリニックになります。
よって、電子取引データの保存・管理はクリニックで実施する必要があり、顧問税理士に依頼することは難しいです。

ここで気になるのが、“どうやって電子帳簿保存法に則ったデータ保存・管理体制を整備するのか”ということではないでしょうか?

その保存・管理方法の例が、国税庁のHPに以下の2つ紹介されています(図2)。
もし保存・管理方法にお困りの先生がおられましたら、こちらの資料をご参考ください。

 


図2.電子取引データの保存・管理方法(国税庁パンフレットより一部抜粋)

(引用元:国税庁、「電子取引データの保存方法をご確認ください【令和6年1月以降用】」、令和5年7月、p.2)

 

②事務処理規定の作成
電子帳簿保存法では、電子取引データ保存・管理の条件として、電子取引データが改ざんされていないことを証明する必要があります。
その証明方法の中で、お金を掛けずにクリニックで簡単に対応できる方法が「事務処理規定の作成」です。

事務処理規定とは、電子取引データを適正に保存・管理するために定めたルールです。このルールをクリニックで設定し、そのルールに準じて保存・管理を行えば、前述した条件をクリアできます。
規定を初めから作るのは大変そうだと懸念する先生もおられますが、国税庁HPに公開されている事務処理規定のひな形を使用すれば、簡単に作成できるため是非ご活用ください。

 

・国税庁_事務処理規定サンプルダウンロードページURL
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm

 

③スタッフを含めたクリニック全体への周知

クリニックの備品の発注や卸さんからの請求書又は領収書の受け渡しなど、スタッフさんも多かれ少なかれ経費に関わるやり取りに携わっておられるかと思います。
スタッフさんが担当したものも含めて、全てのクリニック経費に関わる書類の把握を院長先生がご担当されていては、これまで以上に先生のお仕事が増えてしまいます。

 

「これは紙で保管してよい書類だな」

「これは電子取引データだから、××の方法で所定のファイルに保存しないといけないな」

「電子取引データで修正があったから事務処理規定を確認しよう」

 

など、スタッフさんが自分たちで判断してくれるように、電子帳簿保存法についてクリニック全体で理解しておいていただくことをお勧めします。

 

弊社の公式YouTubeチャンネルにて、クリニック向けに「電子帳簿保存法」を短時間で内容を理解できる解説動画を公開中です。
電子帳簿保存法に関してクリニック全体への周知にもご利用いただける動画かと思いますので、よろしければご活用ください。

 

▶クリニック視点で電子帳簿保存法の概要について解説!

 

 

▶電子帳簿保存法に違反しないためにクリニックで実施すべき対策を紹介!

 

 

4)まとめ

 

ここまで、クリニック向けに2024年より施行される電子帳簿保存法の改正内容とクリニックで実施すべき対策3つ(①電子取引データの保存・管理体制の整備、②事務処理規定の作成、③クリニック全体への周知)について解説しました。
本法律に違反すると、

・青色申告特別控除や中小企業の様々な税制優遇が使えなくなる可能性

・「推計課税」や「重加算税」の対象になる恐れ

・会社法違反として100万円以下の過料になる可能性

等があるので、できれば2023年内に対策を進めていただくことをお勧めします。

 

この記事が少しでもお役に立ちましたら幸いです。

 

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