クリニックにおける健康保険証の有効期限切れに伴う暫定的な取り扱い
本記事は「クリニックにおける健康保険証の有効期限切れに伴う暫定的な取り扱い」について、チーフ経営コンサルタントの百合草が医師のために記載した文書です。
より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。
<目次>
2024年12月2日以降、従来の健康保険証の発行が停止され、医療機関における保険診療の形が大きく変わりました。
今後は「マイナ保険証」または「資格確認書」が保険診療の基本となります。
この変化は、医療機関の窓口業務や患者さんへの説明にも影響を与えるため、医師の皆様が正確な情報を理解しておくことが重要です。
1.従来の健康保険証の有効期限切れ
これまで発行されてきた健康保険証は、2024年12月2日以降、原則として新たに発行されなくなりました。
これは、マイナンバーカードを用いた「マイナ保険証」を基盤とする新たな医療DX推進の一環です。
多くの患者さんにとって、従来の健康保険証は2025年7月31日以降、順次有効期限を迎えます。
特に、後期高齢者医療制度や国民健康保険の加入者(被保険者)がお持ちの保険証は、この期限を境に利用できなくなります。
今後は「マイナ保険証」か「資格確認書」を医療機関等に提示することで、ご自身の自己負担割合にて、これまで通り保険診療を受けることができます。
※資格確認書とは、マイナンバーカードを取得していない方や、マイナ保険証の利用登録をしていない方(マイナ保険証をお持ちでない方)等の保険資格を確認できるよう、ご自身が加入している医療保険者(勤務先や各自治体など)から無償で交付されるものです。
資格確認書の交付対象
▼申請なしで交付される方
・マイナ保険証をお持ちでない方
・後期高齢者医療制度の被保険者(※2026年7月末までの暫定措置)
▼申請により交付される方
・マイナ保険証をお持ちでも、高齢や障害等の理由でマイナンバーカードでの受診が困難な方
・マイナンバーカードを紛失・更新中のため、一時的に使用できない方
2.後期高齢者医療制度の加入者の方
後期高齢者医療制度の被保険者の方々は、原則として、現在お持ちの健康保険証が2025年7月31日で有効期限を満了します。
2025年8月1日以降は、新たな保険証は発行されません。
<対象者となる方々>
・75歳以上の方
・65歳から74歳までで、一定の障害があると認定された方
後期高齢者医療制度の被保険者の方々には、2026年7月末までの間、マイナ保険証の有無に関わらず、申請不要で資格確認書が無償交付されます。
3.国民健康保険の加入者の方
国民健康保険の被保険者の皆様も、2025年7月31日以降、順次健康保険証の有効期限を迎えます。
具体的な有効期限は、お住まいの市区町村によって異なりますので、患者さんにはお手元の保険証で確認いただくよう促しましょう。
<国民健康保険の主な加入者>
・自営業の方
・退職して職場の健康保険を脱退した方
・職場の健康保険に加入していない方(パート・アルバイトなど)
・農業や漁業などに従事している方 など
国民健康保険においても、マイナンバーカードを取得していない方やマイナ保険証の利用登録をしていない方には、保険証の有効期限前に申請不要で資格確認書が無償交付されます。
また、高齢者や障害者など、マイナ保険証での受診が困難な方には、申請により資格確認書が交付されます。
4.健康保険証の有効期限切れに伴う暫定的な取り扱い
このような大きな移行期において、患者さんがスムーズに医療を受けられるよう、厚生労働省は2025年7月末の健康保険証有効期限切れ問題に対応する暫定措置を設けました。
2024年6月27日付の厚生労働省事務連絡によると、2025年8月1日以降、有効期限が切れた従来の健康保険証や「資格情報のお知らせ」のみを持参した患者さんに対しても、オンライン資格確認システムを通じて資格情報が確認できれば、当面は保険診療を認めるという運用が示されました。
この暫定措置は、2026年3月末までとされています。
これは、多くの患者さんが新しい仕組みに慣れるまでの混乱を避けるための重要な配慮です。
しかし、医療機関としては、患者さんが次回以降マイナ保険証または資格確認書を持参するよう、丁寧に働きかけることが求められます。
<2025年6月27日付事務通知抜粋>
令和7年8月1日以降、多数の自治体で国民健康保険の健康保険証が有効期限切れにより順次失効していくことにより、気がつかずに有効期限が切れた健康保険証を引き続き持参してしまう患者、健康保険証の切り替えに伴って通知された「資格情報のお知らせ」のみを持参する患者が保険医療機関等を訪れることも当面は想定される。
○患者が有効期限を迎えた従来の健康保険証からの切り替えやマイナ保険証の電子証明書の有効期限の更新等への対応が必要な中において、こうした場合の移行期の対応として、患者に10割の負担を求めるのではなく、保険給付を受ける資格を確認した上で適切に受診が行われるよう、被保険者番号等によりオンライン資格確認システムに資格情報を照会するなどした上で、患者に対して3割等の一定の負担割合を求めてレセプト請求を行うこととする運用は、保険医療機関等の現場における実態を勘案すれば、暫定的な対応として差し支えないものと考える。
○こうした移行期における暫定的な対応は、最後に切り替わる自治体の健康保険証の有効期限が令和7年12月1日であることに鑑み、令和8年3月末までの対応とし、あわせて、保険医療機関等から患者に対し、次回以降はマイナ保険証又は資格確認書を持参いただくよう働きかけることについて御協力いただきたい
引用:厚生労働省「健康保険証の有効期限切れに伴う暫定的な取扱いに関する疑義解釈資料の送付について」
5.まとめ
令和8年3月末までの間は、有効期限切れの健康保険証でもオンライン資格確認ができれば保険診療が可能となる暫定措置が講じられます。
これにより、患者さんの受診機会が損なわれることを防ぎつつ、新しい保険診療体制への移行を促す狙いがあります。
医師の皆様におかれましては、患者さんが安心して医療を受けられるよう、この暫定的な取り扱いを理解し、窓口での案内が必要となります。
そして、この移行期間中に、患者さんに対してマイナ保険証の利用や資格確認書の取得を促す働きかけを行うことが、今後の円滑な医療提供体制構築のために不可欠となります。
本コラムが、日々の診療およびクリニック経営の一助となれば幸いです。
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