厚労省通知による2030年標準型電子カルテ義務化とは
本記事は「厚労省通知による“2030年標準型電子カルテ義務化”」について、チーフ経営コンサルタントの竹下が医師のために記載した文書です。
より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。
<目次>
- はじめに
- 医療DXと「医療DX令和ビジョン2030」の概要
- 標準型電子カルテが示された背景
・全国医療情報プラットフォーム構想
・電子カルテ標準化が求められる理由 - 標準型電子カルテとは何か
・定義と位置づけ
・想定される主な要件 - 「2030年義務化」は本当に義務なのか
- クリニック経営への影響
- 2030年までのスケジュール整理
- まとめ
1.はじめに
ここ数年、「2030年に電子カルテが義務化されるらしい」といった情報情報を目にする機会が増えています。
これらの情報の根拠となっているのが、厚生労働省が示している「医療DX令和ビジョン2030」および関連する検討会資料・通知です。
厚生労働省は、医療分野におけるデジタル化を国全体で推進する方針を示しており、その概要は公式ページでも公開されています。
▶ 厚生労働省「医療DXについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx.html
本コラムでは、厚労省・デジタル庁の公式資料をベースに、「標準型電子カルテ」がどう位置づけられているか、そしてクリニックが2030年までに何を押さえておくべきかを整理します。
2.医療DXと「医療DX令和ビジョン2030」の概要
厚労省は「医療DXについて」というページで、医療分野のデジタル化の全体像を示しています。医療DXの方向性を示す中心的な構想が「医療DX令和ビジョン2030」であり、「全国どこでも質の高い医療を切れ目なく提供するためのデジタル基盤整備」が基本コンセプトです。
医療DX令和ビジョン2030では、特に以下のような柱が示されています。
- 全国規模で医療情報を共有するための共通基盤(プラットフォーム)づくり
- 電子カルテ等の標準化と導入推進
- 電子処方箋の導入・普及、オンライン資格確認等の活用
この中で、電子カルテは「単なる院内業務システム」ではなく、全国レベルの医療情報基盤の一部として位置づけられています。
3.標準型電子カルテが示された背景
●医療情報プラットフォーム構想
厚労省は「電子カルテ情報共有サービス」を中核とした全国医療情報プラットフォームの整備を進めています。
この仕組みでは、患者の診療情報・検査結果・投薬情報などを、地域や医療機関の垣根を越えて共有できることが想定されています。
電子カルテ情報共有サービスは、モデル事業や段階的な改修を経て制度化へ向けた検討が続けられており、「どの医療機関の電子カルテからも、一定のルールで情報を引き出して活用できる」ことを目指すものとされています。
▶ 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/denkarukyouyuu.html
●電子カルテ標準化が求められる理由
現在の電子カルテ市場はベンダーごとに仕様が異なり、データ形式や項目名称も統一されていないため、他院へのデータ移行や地域連携時に変換コストが発生するという課題が指摘されています。
特に医療機関間での情報共有や、患者が転院・紹介された際の情報利活用を円滑に進めるためには、電子カルテの標準化が欠かせない要素とされています。
こうした背景から、厚労省は「電子カルテの標準化・普及」を医療DX推進の柱の一つとして位置づけ、標準型電子カルテの検討を進めています。
4.標準型電子カルテとは何か
標準型電子カルテの定義と位置づけ
厚労省資料における「標準型電子カルテ」は、特定のベンダー製品名を指すものではなく、「国が示す標準仕様・標準コード体系に沿って構築された電子カルテ」という概念的枠組みを指しています。
「電子処方箋・電子カルテの目標設定等について」などの資料では、標準型電子カルテを、全国医療情報プラットフォームや電子カルテ情報共有サービスと連携する前提となる電子カルテとして位置づけています。
想定される主な要件
厚労省の資料から読み取れる、標準型電子カルテの主な要件は次のようなものです。
- クラウド型を前提としたシステム構成
オンプレミスにも一定の配慮はあるものの、全国サービスとの連携性や保守性を踏まえ、クラウド型電子カルテが基本想定とされています。 - 電子カルテ情報共有サービスとの連携
標準型電子カルテは、電子カルテ情報共有サービスに診療情報を送受信できることが前提とされています。 - 電子処方箋との一体的な普及
電子処方箋の普及と一体で推進される予定が示されており、オンラインでのやり取りに対応できることが求められます。 - データ標準化と将来的な引き継ぎ可能性
標準コードやフォーマットに沿って記録し、他院や将来のシステム更新時にもデータ活用できることが想定されています。
▶ 厚生労働省「電子処方箋・電子カルテの目標設定等について(PDF)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001549830.pdf
5.「2030年義務化」は本当に義務なのか登録しない場合の代替案
しばしば「2030年に電子カルテが義務化される」と表現されることがありますが、現時点で厚労省の資料上に明示的な法的義務づけは確認されていません。
厚労省が示しているのは、「2030年までにほぼすべての医療機関・薬局で電子カルテおよび電子処方箋の導入が進んでいる状態を目指す」という政策目標であり、現段階では法令による義務というより、普及目標として位置づけられています。
したがって「2030年までに導入していないと違法になる」という意味合いではありませんが、医療DXの基盤整備が電子カルテや電子処方箋を前提に進むことを踏まえると、実務上は導入が望ましい場面が徐々に増えていく可能性があります。
6.クリニック経営への影響
●電子カルテ未導入クリニックへの影響
今後、全国規模で医療情報を共有するための共通基盤(プラットフォーム)や電子処方箋が標準インフラとして整備されていく中で、紙カルテのままでは以下のような制約が生じる可能性があります。
- 電子処方箋の活用が難しくなり、調剤情報・服薬状況の共有に遅れが出る
- 他院との情報共有や地域連携パスへの参加が制限される
- 将来的に診療報酬や各種加算で、電子カルテ・電子処方箋の利用が前提となる項目が増える可能性
これらは制度設計や施行時期によりますが、「電子カルテを導入していないこと」が、今後の制度対応や連携面での課題になり得ることが示唆されています。
●すでに電子カルテを導入しているクリニックへの影響
既に電子カルテを利用しているクリニックにとっても、標準型電子カルテの動向は重要です。更新やシステム移行を見据え、次の点を確認しておくことが推奨されます。
- 自社システムが標準仕様(データ形式・コード体系・インターフェース)にどこまで対応しているか
- 電子カルテ情報共有サービスや電子処方箋との連携スケジュール、対応方針
- 将来的な標準型電子カルテへの移行パスや、データ移行の可否・範囲
これらを早めに把握しておくことで、必要な対応を計画的に進めやすくなります。
7.2030年までのスケジュール整理
厚労省および関係資料では、標準型電子カルテおよび関連制度について、概ね以下のような流れが示されています
- 2025年前後:標準型電子カルテの基本要件・仕様の整理
検討会やワーキンググループ等で、標準仕様・連携要件・運用ルールが具体化。 - 2026年前後:標準型電子カルテの本格提供開始を目指す
標準仕様に対応した電子カルテ製品の市場投入や、電子カルテ情報共有サービスとの接続開始が想定。 - 2030年まで:標準仕様に準拠した電子カルテの普及
電子処方箋・全国医療情報プラットフォームと一体で、全国の医療機関や薬局のほとんどで利用される状態にすることを目標とする。
デジタル庁の「健康・医療分野のDX」でも、全体ロードマップが厚労省と整合する形で整理されており、両省庁の連携のもと段階的に進むと考えられます。
▶ デジタル庁「健康・医療分野のDX」
https://www.digital.go.jp/policies/health
8.まとめ
厚生労働省が示す「2030年標準型電子カルテ普及」は、医療機関に対する直接的な義務づけではなく、医療DX推進の一環として全国的な医療情報基盤整備を目指す政策的方針と位置づけられています。
現時点では法的義務化は明示されていませんが、今後は電子カルテ(特に標準仕様準拠のもの)が前提となる制度・仕組みが増える可能性があります。
クリニックとしては、
- 公式サイト・検討会資料を定期的にチェックする
- 自院の電子カルテ環境が標準仕様・連携要件にどこまで対応可能かをベンダーと確認する
- 更新や乗り換えのタイミングを「2030年までのロードマップ」と同期させて検討する
といった点を意識することで、「義務化」という言葉に過度に振り回されることなく、現実的かつ柔軟に医療DX対応を進めていくことが期待されます。
本コラムが、クリニックの情報発信方法を検討する際の一助となれば幸いです。
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