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2024.02.14

外来感染対策向上加算・発熱患者等対応加算【2024年6月更新】

本記事は「外来感染対策向上加算・発熱患者等対応加算」について、経営コンサルタントの西山が医師のために記載した文書です。

より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。

 

 

〈目次〉

  1. 外来感染対策向上加算・発熱患者等対応加算の算定要件
  2. 外来感染対策向上加算・発熱患者等対応加算の施設基準
  3. 外来感染対策向上加算・発熱患者等対応加算の疑似解釈
  4. 外来感染対策向上加算・発熱患者等対応加算の届出
  5. まとめ

 

1.外来感染対策向上加算・発熱患者等対応加算の算定要件

 

外来感染対策向上加算は2022年度診療報酬改定で診療所・クリニック向けに外来診療時の感染防止対策に係る評価として新設された加算です。
外来感染対策向上加算は患者1人につき月1回限り、6点の算定が可能です。

 

この外来感染対策向上加算について、2024年度の診療報酬改定で見直しが行われました。

 

外来感染対策向上加算の算定要件(初診時)

注 11 組織的な感染防止対策につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関(診療所に限る。)において初診を行った場合は、外来感染対策向上加算として、月1回に限り6点を所定点数に加算する。ただし、発熱その他感染症を疑わせるような症状を呈する患者に対して適切な感染防止対策を講じた上で初診を行った場合については、発熱患者等対応加算として、月1回に限り20点を更に所定点数に加算する。

引用元:「診療報酬の算定方法の一部を改正する告示(別表第一)」(令和6年厚生労働省告示第57号)
※下線部が2024年度診療報酬改定での改定部分

 

2024年度(令和6年度)の診療報酬改定においては、これまでの「月に1回に限り6点を所定点数に加算」に加えて上記下線部にある通り、「発熱やその他感染症を疑わせるような症状を呈する患者に対して適切な感染防止対策を講じた上で初診を行った場合に、「発熱患者等対応加算」として、月1回に限り20点を更に所定点数に加算」となっております。

こちらは新型コロナ禍において特例加算として算定されていた「トリアージ実施料(特例)」や2024年10月以降に算定されていた「特定疾患療養管理料(100床未満の病院)(特例)」に類似する加算になるものと思われます。
今後は実質的に外来感染対策向上加算への届け出を行っている医院だけが感染症への診療を評価した「発熱患者等対応加算」が算定できる、ということになりそうです。

 

外来感染対策向上加算は、病床数19床以下の診療所・クリニックが所定の施設基準を満たして届出を行った上で、以下を算定する場合において算定可能です。

 

初診料、再診料、小児科外来診療料、外来リハビリテーション診療料、外来放射線照射診療料、地域包括診療料、認知症地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、外来腫瘍化学療法診療料、救急救命管理料、退院後訪問指導料、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)・(Ⅱ)、在宅患者訪問看護・指導料、同一建物居住者訪問看護・指導料、在宅患者訪問点滴注射管理指導料、在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料、在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者訪問栄養食事指導料、在宅患者緊急時等カンファレンス料、精神科訪問看護・指導料

 

ただし、患者1人あたり月1回限りの算定となるため、ある患者さんが同月内に初診と再診でそれぞれ受診した場合でも、外来感染対策向上加算の算定は1回となります。

 

2.外来感染対策向上加算・発熱患者等対応加算の施設基準

 

外来感染対策向上加算の施設基準も2024年度の診療報酬改定において、一部見直しが行われています。

 

■外来感染対策向上加算(発熱患者等対応)の施設基準

(1) 診療所であること。
(2) 感染防止に係る部門「以下「感染防止対策部門」という。」を設置していること。
ただし、別添3の第 20 の1の(1)イに規定する医療安全対策加算に係る医療安全管理部門をもって感染防止対策部門としても差し支えない。
(3) 感染防止対策部門内に、専任の医師、看護師又は薬剤師その他の医療有資格者が院内感染管理者として配置されており、感染防止に係る日常業務を行うこと。なお、当該職員は別添3の第 20 の1の(1)アに規定する医療安全対策加算に係る医療安全管理者とは兼任できないが、医科点数表第1章第2部通則7に規定する院内感染防止対策に掲げる業務は行うことができる。
(4) 感染防止対策の業務指針及び院内感染管理者の具体的な業務内容が整備されていること。
(5) (3)の院内感染管理者により、最新のエビデンスに基づき、自施設の実情に合わせた標準予防策、感染経路別予防策、職業感染予防策、疾患別感染対策、洗浄・消毒・滅菌、抗菌薬適正使用等の内容を盛り込んだ手順書(マニュアル)を作成し、各部署に配布していること。
(6) (3)の院内感染管理者により、職員を対象として、少なくとも年2回程度、定期的に院内感染対策に関する研修を行っていること。なお、当該研修は別添2の第1の3の(5)に規定する安全管理の体制確保のための職員研修とは別に行うこと。
(7) (3)の院内感染管理者は、少なくとも年2回程度、感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンスに参加していること。
なお、感染対策向上加算1に係る届出を行った複数の医療機関と連携する場合は、当該複数の医療機関が開催するカンファレンスに、それぞれ少なくとも年1回参加し、合わせて年2回以上参加していること。
また、感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が主催する、新興感染症の発生等を想定した訓練については、少なくとも年1回以上参加していること。
(8) (7)に規定するカンファレンスは、ビデオ通話が可能な機器を用いて実施しても差し支えない。

(9) 院内の抗菌薬の適正使用について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会から助言を受けること。
また、細菌学的検査を外部委託している場合は、薬剤感受性検査に関する詳細な契約内容を確認し、検査体制を整えておくなど、「中小病院における薬剤耐性菌アウトブレイク対応ガイダンス」に沿った対応を行っていること。

(10) (3)の院内感染管理者により、1週間に1回程度、定期的に院内を巡回し、院内感染事例の把握を行うとともに、院内感染防止対策の実施状況の把握・指導を行うこと。

(11) 当該保険医療機関の見やすい場所に、院内感染防止対策に関する取組事項を掲示していること。

 

(12) 当該保険医療機関の外来において、受診歴の有無に関わらず、発熱その他感染症を疑わせるような症状を呈する患者の受入れを行う旨を公表し、受入れを行うために必要な感染防止対策として、空間的・時間的分離により発熱患者等の動線を分ける等の対応を行う体制を有していること。

(13) 感染症法第 38 条第2項の規定に基づき都道府県知事の指定を受けている第二種協定指定医療機関(同法第 36 条の2第1項の規定による通知(同項第2号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)又は医療措置協定(同号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)に基づく措置を講ずる医療機関に限る。)であること。

 

(14) 新興感染症の発生時等に、発熱患者等の診療を実施することを念頭に、発熱患者等の動線を分けることができる体制を有すること。

(15) 厚生労働省健康局結核感染症課「抗微生物薬適正使用の手引き」を参考に、抗菌薬の適正な使用の推進に資する取組を行っていること。

(16) 新興感染症の発生時や院内アウトブレイクの発生時等の有事の際の対応を想定した地域連携に係る体制について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った他の保険医療機関等とあらかじめ協議されていること。

(17) 感染症から回復した患者の罹患後症状が持続している場合に、当該患者の診療について必要に応じて精密検査が可能な体制又は専門医への紹介が可能な連携体制を有していることが望ましい。

(18) 「A234-2」に掲げる感染対策向上加算に係る届出を行っていない保険医療機関であること。

 

[経過措置] 令和6年3月31日において現に外来感染対策向上加算の届出を行っている保険医療機関については、令和6年12月31日までの間に限り、1の(14)の基準を満たしているものとみなす。

 

※ 再診料、医学管理料等のうち外来感染対策向上加算の対象となるもの及び精神科訪問看護・指導料における外来感染対策向上加算についても同様。

引用元:「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和6年3月5日保医発 0305 第5号)
※下線部が2024年度診療報酬改定での改定部分

 

現時点の情報から2024年度の診療報酬改定で見直しのあった部分をまとめると

1)感染防止対策に加えて感染症の患者さんを適切に診療する体制整備が必要。

2)感染症疑いの患者さんを受け入れる旨を公表するとともに、発熱の患者さんに関しては動線を分けるなどの対応ができる体制を整備すること。

3)第二種協定指定医療機関 (第 36 条の2第1項の規定による通知(同項第2号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)又は医療措置協定(同号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)に基づく措置を講ずる医療機関に限る。)であること。

※ただし、「令和6年3月31日において現に外来感染対策向上加算の届出を行っている保険医療機関」については、令和6年12月31日までの間に限り、1の(14)の基準を満たしているものとみなす、みなし規定あり。

4)感染症罹患後の後遺症のある患者さんについては精密検査が可能な体制、もしくは専門医への紹介が可能な連携体制があることが望ましい。

となります。

特に新設された要件である、「第二種協定指定医療機関であること」は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が一部改正され、令和6年4月1日より新設される「第二種協定指定医療機関」の指定を受ける必要がある、ということです。

 

こちらは都道府県からの指定を受ける必要があり、具体的にどの範囲までの要件を満たす必要があるのか?はそれぞれの都道府県ごとに違いが生じる可能性があり、議論を呼びそうです。

 

いずれにせよ、外来感染対策向上加算の届け出医療機関について、新型コロナウイルス感染症のような新興感染症発生時には各都道府県が定める範囲において外来医療の提供が求められることになります。

 

ひとまず厚労省の施行通知に基づく「第二種協定指定医療機関の指定要件」のうち、医療機関関連部分を下記に記載しておきます。

 

第二種協定指定医療機関の指定要件

⑴ 発熱外来を実施する医療機関について(指定医療機関基準第4関係)
・ 当該医療機関に所属する者に対して、最新の知見に基づき適切な感染防止等の措置を実施することが可能であること。
・ 受診する者同士が可能な限り接触することがなく、診察することができること等の院内感染対策を適切に実施しながら、外来医療を提供することが可能であること。
・ 新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において、都道府県知 事からの要請を受けて、外来医療を提供する体制が整っていると認められること。

 

⑵ 外出自粛対象者への医療の提供を実施する病院又は診療所について(指定医療機関基準第4の2関係)
・ 当該医療機関に所属する者に対して、最新の知見に基づき適切な感染防止等の措置を実施することが可能であること。
・ 新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において、都道府県知事からの要請を受けて、外出自粛対象者に対してオンライン診療等の医療を提供する体制が整っていると認められること。

引用元:「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」の 一部の施行等について(通知)」(令和5年5月26日保医発 0526 第11号)
https://www.mhlw.go.jp/content/001102407.pdf

 

以上より、外来感染対策向上加算の施設基準の主なポイントは次の4つになります。

①感染防止対策部門の設置

②連携体制の整備

③研修への参加

感染症疑い等の患者を診療する体制

 

①感染防止対策部門の設置

院内に感染対策部門を設け、医療有資格者を専任の院内感染管理者として配置。そして自院の感染防止マニュアルを整備した上で、院内感染対策の周知や実施状況の確認を目的に、週1回程度の院内の定期チェックと最低年2回の職員研修を実施する体制整備、院内感染防止対策に関する取組事項の掲示をする必要があります。

 

②連携体制の整備

感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会と連携して、自院の抗菌薬の適正使用について助言を受けたり、新興感染症の発生時等や院内アウトブレイクの発生時等の有事の際の対応について事前に連携体制を確認したりする必要があります。

 

③研修への参加

①の院内感染管理者が、②の連携医療機関又は医師会のカンファレンスに最低年2回、参加することが求められます。尚、複数の医療機関と連携している場合は、各連携医療機関のカンファレンスに最低年1回参加する必要があるため、例えば3つの機関と連携していると、各医療機関の研修へ最低年1回(年間計3回以上)の研修参加が必要となります。

 

④感染症疑い等の患者を診療する体制

第二種協定指定医療機関又は医療措置協定の指定を受けた上で、感染症疑いの患者さんを受け入れる旨を公表すると共に、感染防止対策に加えて感染症の患者さんを適切に診療する体制整備が必要。

 

3. 外来感染対策向上加算・発熱患者等対応加算の疑義解釈

 

・2022年度(令和4年度)の疑義解釈

上記の①~④のポイントに関して、2022年度(令和4年度)に公表された疑義解釈では更に以下の解説が加わっております。

 

①感染防止対策部門の設置

「院内感染管理者により、職員を対象として、少なくとも年2回程度、定期的に院内感染対策に関する研修を行っていること」とされているが、

1)当該研修は、必ず院内感染管理者が講師として行わなければならないのか。

⇒院内感染管理者が当該研修を主催している場合は、必ずしも院内感染管理者が講師として行う必要はない。ただし、当該研修は、以下に掲げる事項を満たすことが必要であり、最新の知見を共有することも求められるものであることに留意すること。

✓ 院内感染対策の基礎的考え方及び具体的方策について、当該保険医療機関の職員に周知徹底を行うことで、個々の職員の院内感染対策に対する意識を高め、業務を遂行する上での技能の向上等を図るものであること。

✓ 当該保険医療機関の実情に即した内容で、職種横断的な参加の下に行われるものであること。

✓ 保険医療機関全体に共通する院内感染対策に関する内容について、年2回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催すること。

✓ 研修の実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修項目)について記録すること。

なお、研修の実施に際して、AMR臨床リファレンスセンターが公開している医療従事者向けの資料(※)を活用することとして差し支えない。

http://amr.ncgm.go.jp/medics/2-8-1.html

2)保険医療機関外で開催される研修会への参加により、当該要件を満たすものとしてよいか。

⇒不可。

 

・「院内感染防止対策に関する取組事項を掲示していること」とされているが、具体的にはどのような事項について掲示すればよいか。

⇒以下の内容について掲示すること。

✓ 院内感染対策に係る基本的な考え方

✓ 院内感染対策に係る組織体制、業務内容

✓ 抗菌薬適正使用のための方策

✓ 他の医療機関等との連携体制

 

②連携体制の整備

感染対策向上加算の届出医療機関間の連携について、以下の場合においては届出可能か。

1)特別の関係にある保険医療機関と連携している場合

⇒可能。

2)医療圏や都道府県を越えて連携している場合

⇒医療圏や都道府県を越えて所在する場合であっても、新興感染症の発生時や院内アウトブレイクの発生時等の有事の際に適切に連携することが可能である場合は、届出可能。

 

「有事の際の対応を想定した地域連携に係る体制について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った他の保険医療機関等とあらかじめ協議されていること」とされているが、

1)「等」にはどのようなものが含まれるか。

⇒保健所や地域の医師会が含まれる。

2)具体的には、どのようなことを協議するのか。また、協議した内容は記録する必要があるか。

⇒有事の際に速やかに連携できるよう、例えば、必要な情報やその共有方 法について事前に協議し、協議した内容を記録する必要がある。

 

「院内の抗菌薬の適正使用について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った他の保険医療機関又は地域の医師会から助言を受けること」とされているが、具体的にはどのようなことをいうのか。

⇒助言を受ける保険医療機関が、「中小病院における薬剤耐性菌アウトブレイク対応ガイダンス」における地域の感染管理専門家から、適切に助言を受けられるよう、感染対策向上加算1の届出を行っている保険医療機関や地域の医師会から、助言を受け、体制を整備しておくことをいう。

 

・感染対策向上加算1の施設基準において、「感染対策向上加算2、感染対策向上加算3又は外来感染対策向上加算に係る届出を行った他の保険医療機関に対し、必要時に院内感染対策に関する助言を行う体制を有すること。」とされているが、具体的にどのような体制であればよいのか。

⇒感染対策向上加算2、感染対策向上加算3又は外来感染対策向上加算に係る届出を行った他の保険医療機関から院内感染対策に関する助言を求められた場合に助言を行うことができるよう、連絡先の共有等を行うこと。

 

なお、助言内容については、例えば、令和4年度地域保健総合推進事業「院内感染対策ネットワークと保健所の連携推進事業」による「院内感染対策等における病院と保健所の連携事例集について―中間報告―」(令和4年6月)事例2、事例4、事例5に掲げられる以下の項目等を参照されたい。

 

✓多剤耐性菌が発生した医療機関に対し、ラウンドや指導を実施
✓新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生しやすいと考えられる医療機関等への事前の臨地指導
✓新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生した医療機関に対し、感染拡大防止に関する専門的な臨地指導、助言等を実施
✓薬剤耐性菌対策に関する臨地指導、院内研修会開催

 

③研修への参加

・「感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンスに参加していること」とされているが、

1)書面により持ち回りで開催又は参加することは可能か。

⇒不可。

2)当該カンファレンスの内容は、具体的にはどのようなものであればよいか。

⇒具体的な定めはないが、感染対策向上加算1の届出を行っている保険医療医機関は、地域の医師会と連携することとされていることから、感染対策向上加算1の届出を行っている保険医療機関が主催するカンファレンスの内容を参考として差し支えない。なお、例えば、以下に掲げる事項に関する情報の共有及び意見交換を行い、最新の知見を共有することが考えられる。

(例)感染症患者の発生状況、薬剤耐性菌等の分離状況、院内感染対策の実施状況(手指消毒薬の使用量、感染経路別予防策の実施状況等)、抗菌薬の使用状況

 

・感染対策向上加算1の施設基準における、「保健所及び地域の医師会と連携し、感染対策向上加算2又は3に係る届出を行った保険医療機関と合同で、少なくとも年4回程度、定期 的に院内感染対策に関するカンファレンス」について、具体的にどのような内容であればよいか。
⇒カンファレンスの内容については、参加する保健所、地域の医師会、感染対策向上加算2又は3に係る届出を行った保険医療機関との協議により決定して差し支えない。

 

なお、例えば、令和4年度地域保健総合推進事業「院内感染対策ネットワークと保健所の連携推進事業」による「院内感染対策等における病院と保健所の連携事例集について―中間報告―」(令和4年6月)(※)事例2において、以下の項目が掲げられていること等を参照されたい。
✓参加医療機関の感染対策にかかる情報共有
✓参加医療機関が、感染対策で困っていることや工夫していることを発表し、意見交換しながら改善策について検討
✓参加医療機関の相互ラウンドを行い、感染対策の共有や改善について検討
(※)「院内感染対策等における病院と保健所の連携事例集について―中間報告―」(令和4年6月)

 

・感染対策向上加算1の施設基準において、「保健所及び地域の医師会と連携し、感染対策向上加算2又は3に係る届出を行った保険医療機関と合同で、少なくとも年4回程度」カン ファレンスを行うこととされているが、
1) 保健所及び地域の医師会のいずれか又は両方が参加していない場合であっても、当該カンファレンスに該当するか。
⇒該当しない。ただし、やむを得ない理由により参加できなかった場合で あって、参加に代えて、後日書面等によりカンファレンスの内容を共有している場合は、該当する。

2) 保健所や地域の医師会が主催するカンファレンスに参加することをもって、当該要件を満たすものとすることは可能か。
⇒不可。感染対策向上加算1の届出を行った保険医療機関が開催する場 合にのみ当該要件に該当するものである。なお、当該カンファレンスについて、感染対策向上加算1の届出を行った保険医療機関が、保健所や地域 の医師会と共催した場合は可能。

 

・「新興感染症の発生等を想定した訓練については、少なくとも年1回以上参加していること」とされているが、当該訓練とは、具体的にはどのようなものであるか。また、当該訓練は対面で実施する必要があるか。

⇒新興感染症患者等を受け入れることを想定した基本的な感染症対策に係るものであり、例えば、個人防護具の着脱の訓練が該当する。
また、当該訓練はリアルタイムでの画像を介したコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な機器を用いて実施して差し支えない。

 

・「新興感染症の発生等を想定した訓練については少なくとも年1回以上参加していること」における当該訓練については、「疑義解釈資料の送付について(その1)」(令和4年3月31 日)別添1問 27 が示されたが、他にどのようなものが考えられるか。

⇒新興感染症患者等を受け入れることを想定した基本的な感染症対策に係るものであり、参加医療機関の感染症対策等の状況も踏まえて決定することが望ましい。

 

なお、令和4年度地域保健総合推進事業「院内感染対策ネットワークと保健所の連携推進事業」による「院内感染対策等における病院と保健所の連携事例集について―中間報告―」(令和4年6月)事例5において、対象者のレベルや役割に応じて、基本知識の習得や感染症病棟での実地訓練が実施されていることが掲げられていることを参照されたい。

 

・届出について、「当該加算の届出については実績を要しない」こととされているが、この「実績」とは、具体的には何の実績を指すのか。

⇒届出に際して、当該実績を要しないとしていることに留意すること。

✓「職員を対象として、少なくとも年2回程度、定期的に院内感染対策に関する研修を行っていること」における研修の実施

✓「院内感染管理者は、少なくとも年2回程度、感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会(群市区等医師会・都道府県医師会のいずれも該当)が定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンスに参加していること」におけるカンファレンスへの参加

✓「感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が主催する、新興感染症の発生等を想定した訓練については、少なくとも年1回以上参加していること」における訓練への参加

 

④発熱患者の診療等を実施する体制

「新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて発熱患者の外来診療等を実施する体制」とは具体的にはどのような保険医療機関が該当するか。

⇒現時点では、新型コロナウイルス感染症に係る診療・検査医療機関が該当する。

・「新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて(中略)診療等を実施する体制を有し、そのことを自治体のホームページにより公開していること」とされているが、

1)「新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて感染症患者を受け入れる体制」等を有する保険医療機関について、現時点では新型コロナウイルス感染症に係る重点医療機関、協力医療機関及び診療・検査医療機関が該当することとされているが、自治体のホームページにおいて、それぞれどのような情報を公開する必要があるか。

⇒重点医療機関及び協力医療機関については、少なくとも保険医療機関の名称、所在地及び確保病床数を、診療・検査医療機関については、少なくとも保険医療機関の名称、所在地、電話番号及び診療・検査医療機関として対応可能な日時を公開する必要がある。

2)診療の体制を有しているにもかかわらず、自治体のホームページの更新がなされていない等の理由により、当該要件を満たせない場合は、どのように考えればよいか。

⇒自治体のホームページにおいて公開されるまでの間、当該保険医療機関のホームページ等において公開していることをもって、当該要件を満たしているものとして差し支えない。

 

最後に、外来感染対策を算定するには上述した施設基準を満たした上で、外来感染対策向上加算の届け出を提出する必要があります。届出には、院内感染管理者の氏名と役職・抗菌薬適正使用のための方策・連携医療機関名又は地域の医師会・発熱患者の診療等を実施する体制のチェック欄・自治体HPへの公表のチェック欄があります。

※参考:厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(様式1の4)

 

・2024年度(令和6年度)の疑義解釈

次に、2024年度(令和6年度)における外来感染対策向上加算および発熱患者等対応加算の疑義解釈の内容をクリニック(主に無床診療所)向けにご紹介します。*注1

 

【疑義解釈(その1)より】

Q.「A000」初診料の注 11 ただし書及び「A001」再診料の注 15 ただし書に規定する発熱患者等対応加算について、当該保険医療機関において既に外来感染対策向上加算を算定している患者であって、発熱患者等対応加算を算定していないものが、同月に発熱その他感染症を疑わせるような症状で受診した場合について、どのように考えればよいか。

A.外来感染対策向上加算は算定できないが、要件を満たせば発熱患者等対応加算は算定できる。

 

【疑義解釈(その2)より】

Q.「A000」初診料の注 11 本文等に規定する外来感染対策向上加算(以下「外来感染対策向上加算」という。)及び区分番号「A234-2」感染対策向上加算に関する施設基準において、感染症法第 38 条第2項の規定に基づき都道府県知事の指定を受けている第一種協定指定医療機関であること又は同項の規定に基づき都道府県知事の指定を受けている第二種協定指定医療機関であることが求められているが、協定指定医療機関の指定を受けた後、都道府県がホームページ上に当該医療機関を協力指定医療機関として掲載するまでの間も、届出は可能か。

A.協定指定医療機関の指定を受けた後であれば、届出可能。

 

Q.外来感染対策向上加算の施設基準において、「当該保険医療機関の外来において、受診歴の有無に関わらず、発熱その他感染症を疑わせるような症状を呈する患者の受入れを行う旨を公表」していることが求められているが、当該公表については、当該保険医療機関が公表を行う必要があるのか。

A.当該保険医療機関のホームページにより公表することが想定されるが、例えば、自治体、地域医師会等のホームページ又は広報誌に掲載されている場合等においては、別に当該保険医療機関のホームページで公表を行う必要はない。

 

Q.「A000」初診料の注 11 ただし書等に規定する発熱患者等対応加算について、「発熱、呼吸器症状、発しん、消化器症状又は神経症状その他感染症を疑わせるような症状を有する患者に空間的・時間的分離を含む適切な感染対策の下で診療を行った場合に算定する。」とあるが、情報通信機器を用いた診療の場合でも算定できるのか。

A.算定不可。

※注1:疑義解釈の内容は令和6年6月20日時点「疑義解釈(その9)」までの情報となります。

疑義解釈その3~9には主にクリニックに関する外来感染対策向上加算、発熱患者等対応加算の記載がなかったため、本コラムに記載しておりません。疑義解釈資料の最新情報は以下のURLよりご確認いただけます。

参考資料:厚生労働省HP「令和6年度診療報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html

 

4.外来感染対策向上加算・発熱患者等対応加算の届出

 

最後に、外来感染対策を算定するには上述した施設基準を満たした上で、外来感染対策向上加算の届け出を提出する必要があります。
届出には、院内感染管理者の氏名と役職・抗菌薬適正使用のための方策・連携医療機関名又は地域の医師会・発熱患者の診療等を実施する体制のチェック欄・受診歴の有無に関わらず発熱患者等の受入れを行う旨が公表されているホームページの記載欄・第二種協定指定医療機関または医療処置協定の締結・自治体HPへの公表のチェック欄があります。

※参考:厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(様式1の4)

 

5.まとめ

 

本記事では、医療機関・クリニック(無床診療所)向けに外来感染対策向上加算および発熱患者等対応加算について2022年度および2024年度の診療報酬改定内容を反映した情報をお届けしております。
2024年度の診療報酬改定によって、外来感染向上加算の届出を行うには、まず都道府県から第二種協定医療機関又は医療措置協定の指定を受ける必要があります。
その他にも、施設基準に準じた感染対策マニュアルや院内掲示物の準備も必要となります。
これらの施設基準を満たすために、「どのように準備を進めたらいいか?」「何から始めたら良いか?」など、本記事についてより詳しく知りたい方はこちらよりお問い合わせください。

 

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