外来・在宅ベースアップ評価料の令和7年度賃金改善計画書及び令和6年度賃金改善実績報告書の提出について
本記事は「外来・在宅ベースアップ評価料の令和7年度賃金改善計画書及び令和6年度賃金改善実績報告書の提出」について、主任経営コンサルタントの諏訪原が医師のために記載した文書です。
より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。
〈目次〉
- 外来・在宅ベースアップ評価料の概要
- 再届出と実績報告の対象となるクリニック
- 再届出と実績報告の提出期限と提出方法
- 令和7年度賃金改善計画書の作成手順
- 令和6年度賃金改善実績報告書の作成手順
- よくある質問
1.ベースアップ評価料の概要
令和6年の診療報酬改定で「外来・在宅ベースアップ評価料」が新設されました。
外来・在宅ベースアップ評価料は、医療従事者の賃金を改善する取り組みを支援するための診療報酬制度です。
診療報酬改定から1年を迎える6月を節目に、既に外来・在宅ベースアップ評価料を算定している医療機関において、原則として再届出が必要となります。
また、算定状況によっては実績報告書の提出も求められます。
本コラムでは、今回の改定内容と再届出・実績報告の手続きについて、分かりやすく解説します。
2.再届出と実績報告の対象となるクリニック
令和6年の診療報酬改定後、外来・在宅ベースアップ評価料の算定を継続するためには、再届出が必要です。
また、算定後には賃金改善実績を記した実績報告書の提出も求められます。
外来・在宅ベースアップ評価料の令和7年度賃金改善計画書及び令和6年度賃金改善実績報告書の提出が対象となるクリニックと提出期限は以下の通りです。
外来在宅ベースアップ評価料の再届出と実績報告対象となるクリニック
令和6年6月~令和7年2月までに外来・在宅ベースアップ評価料の届出を行った場合
※令和7年3月1~3日までに届出を行い、令和7年3月から算定を開始している場合を含む。
そのため、令和7年3月4日以降に届出を行い、令和7年4月以降から外来・在宅ベースアップ評価料の算定をされているクリニックは対象外となります。
3.再届出と実績報告の提出期限と提出方法
提出期限
・令和7年度賃金改善計画書(つまり外来在宅ベースアップ評価料の再届出)
令和7年6月30日まで
→期日までに届出されていない場合は、令和7年7月分~計画書を提出されるまでの外来・在宅ベースアップ評価料が算定不可となります。
ただし、計画書が未提出のクリニックは、計画書を提出いただき受理されればおおむね次月より再算定可能(※)となります。
※原則として、届出が受理された月の翌月の1日から算定を開始できます。ただし、月の最初の開庁日に届出が受理された場合は、その月の1日から算定を開始できます。
・令和6年度賃金改善実績報告書
令和7年8月31日まで
提出方法
・令和7年度賃金改善計画書(つまり外来在宅ベースアップ評価料の再届出)
専用メールアドレス宛に届出様式のExcelファイルを送付します。
ファイル名には医療機関又はステーションコードを含める必要があります。
ファイル名の例:「9999999_ベースアップ評価料計画書提出.xlsx」
専用メールアドレスは、都道府県ごとに設定されていますので、送付先を間違えないように注意が必要です。
賃金改善計画書及び賃金改善実績報告書のいずれでもクリニックの所在都道府県を入力するとシートの欄外に提出先メールアドレスが表示されますが以下からも確認が可能です。
▼送付先メールアドレス(11ページ参照):
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001467691.pdf
・令和6年度賃金改善実績報告書
上記と同様。
届出提出時の注意点
•メール本文にも、署名等により医療機関又はステーション名及び連絡先を記載。
•メールには、様式以外のファイルは添付しない。
•メールアドレスを持っていない等やむを得ない事情がある場合には、書面で提出しても良い。
4.令和7年度賃金改善計画書の作成手順
令和6年6月の診療報酬改定時よりも「賃金改善計画書」が大幅に簡素化されています。
以下の③までの手順に沿って金額を算出することで計画書に必要ン情報を算出することができます。
①ベースアップ評価料収入(ベースアップ評価料算定金額)の集計
ベースアップ評価料の算定開始~令和7年3月までの、ベースアップ評価料による収入の金額を集計します。
※レセプト作成にあたって医事会計システム(レセプトソフトなどを含む)をお使いの医療機関は、システムからベースアップ評価料の請求金額もしくは算定回数が集計が可能かどうかを確認しておくとスムーズでしょう。
②賃金改善措置による賃金増加分(賃金改善実績額)の計算
賃金改善をしたことによるベースアップ評価料対象職員の賃金増加分(全員の合計額)を計算します。
③①の「ベースアップ評価料収入」と②の「賃金改善措置による賃金増加分」の差額を計算
・「ベースアップ評価料収入分」に余りが出る場合
①の「ベースアップ評価料収入」が50万円
②の「賃金改善措置による賃金増加分」は40万円
上記の場合、①―②=50万円―40万円=10万円となります。
「ベースアップ評価料収入分」に余りが出ているため、10万円を令和7年度の賃金改善分に用いる必要があります。令和7年度の賃金改善計画において、繰り越し分+令和7年度の「ベースアップ評価料算定金額見込み」により、ベア等の金額(対象職員の基本給等にかかる1か月の賃金改善見込み額)を再度調整します。
・「ベースアップ評価料収入分」に余りが出ていない場合
前年度からの繰り越し予定額の欄を0円とします。
5.令和6年度賃金改善実績報告書の作成手順
令和7年3月31日付けで「賃金改善実績報告書」も大幅に簡素化されました。
作成に必要な情報は下記のとおりです。
項目 | 記載事項 | |
① | 基本情報 | 保険医療機関コード、保険医療機関名、所在地、連絡先を記載 |
② |
賃金改善実施期間及びベースアップ評価料算定期間 |
令和6年度において賃金改善を実施した期間(=ベースアップ評価料を算定した期間)を記載 |
③ |
ベースアップ評価料による収入の実績額 |
令和6年度におけるベースアップ評価料の算定金額の総額を記載 |
④ |
ベースアップ評価料による収入の繰越状況 |
繰越額の有無や、算定したベースアップ評価料をベア等実施分に使い切ったかを確認 |
⑤ |
ベースアップ評価料の対象職員(全体)の基本給等 |
ベースアップ評価料で賃上げを行った対象職員の人数、基本給等総額、賃金改善した額を記載(1ヶ月分のみ) |
⑥ |
ベースアップ評価料の対象職員以外の職員の賃上げ |
40歳未満の勤務医や、専ら事務のみを担当している事務職員が在籍している場合、その人数、基本給等総額、賃金改善実績額を記載(1ヶ月分のみ) |
③、④、⑤に関しては令和7年度賃金改善計画書の作成時に確認しているため、同じ内容を記載することとなります。
算定開始時に提出した計画書と実績報告書の内容が異なっていても問題はありません。
6.よくある質問
令和7年3月31日付けで厚生労働省から示された疑義解釈より(抜粋・一部加筆)
問9
令和6年4月から令和7年3月までの間にベースアップ評価料を算定した医療機関等が、同期間内にベースアップ評価料の届出の取り下げを行った場合においても、令和7年8月に「賃金改善実績報告書」を提出する必要はあるか。
(答)必要。「ベースアップ評価料に係る届出様式の改定について」(令和6年9月11 日事務連絡)別添2の問6を参照のこと。
問11
診療所用の「賃金改善実績報告書」に記載する「ベア等による賃金改善実績額」の計算について、どのように考えたらよいか。
(答)ベースアップ評価料の届出にかかる賃金改善の実施前後の給与体系における基本給等総額の差分により計算するが、定期昇給の制度がある医療機関にあっては、基本給等総額の差分から定期昇給相当分を差し引くこと。
問12
給与表等の存在しない医療機関又は訪問看護ステーションにおいて、令和5年度と令和6年度を比較して対象職員の変動がある場合、令和6年度の「賃金改善実績報告書」におけるベースアップ評価料による賃金改善の実施前後の基本給等総額について、どのように考えたらよいか。
(答)令和5年度及び令和6年度のいずれの年度においても在籍している対象職員のみを対象として、ベースアップ評価料の届出にかかる賃金改善の実施前後の基本給等総額の差分を計算すること。その際、「対象職員の常勤換算数」の項目には、実際の人数ではなく、令和5年度及び令和6年度のいずれの年度においても在籍している対象職員の常勤換算数について記載すること。なお、上記による算出が困難なやむを得ない場合については、令和5年度における全ての対象職員の基本給等の総額(人数が変化している場合には、令和5年度における1人当たりの平均額を令和6年度の対象職員数に乗じたもの)を用いて算出を行ってよい。また、令和7年度の「賃金改善実績報告書」においては、令和5年度及び令和7年度のいずれの年度においても在籍している対象職員のみを対象として、同様の計算を行うこと。
▼詳しい内容はこちら
厚生労働省:ベースアップ評価料等について
厚生労働省:ベースアップ評価料届出後に行っていただきたいこと
▼日本医師会:ベースアップ評価料「賃金改善実績報告書」(診療所用)の作成・提出について
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