サーベイランス強化加算・抗菌薬適正使用体制加算【2024年11月更新】
本記事は「サーベイランス強化加算、抗菌薬適正使用体制加算」について、チーフ経営コンサルタントの百合草が医師のために記載した文書です。
より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。
〈目次〉
- サーベイランス強化加算の算定要件
- サーベイランス強化加算の施設基準
- サーベイランス強化加算の疑義解釈
- サーベイランス強化加算の届出
- 抗菌薬適正使用体制加算の算定要件
- 抗菌薬適正使用体制加算の施設基準
- 抗菌薬適正使用体制加算の疑義解釈
- 抗菌薬適正使用体制加算の届出
- まとめ
1.サーベイランス強化加算の算定要件
サーベイランス強化加算とは、感染防止対策に資する情報の提供体制を評価するために2022年度(令和4年度)の診療報酬改定で新設された加算です。
サーベイランス強化加算は患者1人につき月1回限り、1点の算定が可能です。
2.サーベイランス強化加算の施設基準
サーベイランス強化加算を算定するには、以下の施設基準を満たした上で届け出を行う必要があります。
サーベイランス強化加算の施設基準
(1) 外来感染対策向上加算に係る届出を行っていること。
(2) 院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加していること。
引用元:「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和6年3月5日保医発 0305 第5号)
サーベイランス強化加算は外来感染対策の届出を行っている医療機関が条件にあるため、サーベイランス強化加算単体での算定は不可となります。
3.サーベイランス強化加算の疑義解釈
令和4年3月31日、5月13日、令和5年3月30日に公表された疑義解釈で、サーベイランス強化加算の施設基準に以下の解説が加わっております。
・「院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加していること」とされているが、
1) 対象となるサーベイランスには、JANIS及びJ-SIPHE以外にどのようなものがあるか。
⇒現時点では、JANIS及びJ-SIPHEとするが、市区町村以上の規模でJANISの検査部門と同等のサーベイランスが実施されている場合については、当該サーベイランスがJANISと同等であることが分かる資料を添えて当局に内議されたい。
2)JANISに参加する場合にあっては、JANISの一部の部門にのみ参加すればよいのか。
⇒少なくともJANISの検査部門に参加している必要がある。なお、診療所についてもJANISの検査部門への参加は可能である。
・区分番号「A000」初診料の注 13、区分番号「A001」再診料の注17 及び区分番号「A234-2」感染対策向上加算の注4に規定するサーベイランス強化加算並びに区分番号「A234-2」の「1」感染対策向上加算1の施設基準における「院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加していること」について、
1)「疑義解釈資料の送付について(その1)」(令和4年3月31日事務連絡)別添1の問 20 における「JANISの検査部門と同等のサーベイランス」とは、具体的にはどのようなものを指すのか。
⇒例えば、細菌検査により各種検体から検出される主要な細菌の分離頻度、その抗菌薬感受性や抗菌薬の使用状況を継続的に収集・解析し、医療機関における主要菌種・主要な薬剤耐性菌の分離状況や抗菌薬使用量を明らかにするための薬剤耐性に関連する調査等を含むものを指す。
2) 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成 10年法律第 114 号)に基づく感染症発生動向調査は該当するか。
⇒該当しない。
3) 地域において感染症等に係る情報交換を行うことを目的としたネットワークは該当するか。
⇒参加している各保険医療機関において細菌の分離頻度、その抗菌薬感受性や抗菌薬の使用状況等に係る調査が実施されておらず、単に感染症等に係る情報交換を行っている場合は、該当しない。
4) 参加医療機関において実施される全ての細菌検査の各種検体ではなく、特定の臓器や部位等の感染症に限定して、細菌の分離頻度、その抗菌薬感受性や抗菌薬の使用状況等に係る調査が実施されているものは該当するか。
⇒特定の臓器や部位等の感染症に限定して調査が実施されている場合は、該当しない。
5) サーベイランス強化加算について、新たにJANIS又はJ-SIPHEに参加する場合、どの時点から当該要件を満たすものとしてよいか。
⇒サーベイランス強化加算については、保険医療機関が新たにJANIS又はJ-SIPHEに参加する場合、令和5年3月31日までの間に限り、JANIS又はJ-SIPHEの参加申込書を窓口に提出した時点から当該要件を満たすものとして差し支えない。
この場合、サーベイランス強化加算の施設基準の届出を行う際に、当該参加申込書の写しを添付すること。
なお、参加医療機関から脱退した場合は、速やかにサーベイランス強化加算の届出を取り下げること。
・区分番号「A000」初診料の注 13、区分番号「A001」再診料の注 17 及び区分番号「A234-2」感染対策向上加算の注4に規定するサーベイランス強化加算について、「疑義解釈資料の送付について(その8)」(令和4年5月13日事務連絡)において、「保険医療機関が新たにJANIS又はJ-SIPHEに参加する場合、令和5年3月31日までの間に限り、JANIS又はJ-SIPHEの参加申込書を窓口に提出した時点から当該要件を満たすものとして差し支えない。」とされているが、令和5年4月1日以降に保険医療機関が新たにJANIS又はJ-SIPHEに参加する場合及びJANIS又はJ-SIPHEから一度脱退した医療機関が再び参加する場合について、どのように考えればよいか。
⇒令和5年4月1日以降に保険医療機関が新たにJANIS又はJ-SIPHEに参加し、当該加算の施設基準の届出を行う場合、JANIS又はJ-SIPHEにデータを提出していることを示す書類(データ提出状況を含む参加登録証明書等)を添付すること。
また、データ提出がないことにより参加登録を抹消されるなど、JANIS又はJ-SIPHEから一度脱退した医療機関については、脱退した時点で速やかにサーベイランス強化加算の届出を取り下げる必要があり、その後再びJANIS又はJ-SIPHEに参加し、サーベイランス強化加算の施設基準の届出を行う際には、JANIS又はJ-SIPHEにデータを提出していることを示す書類を添付すること。
4.サーベイランス強化加算の届出
サーベイランス強化加算の届出は、連携強化加算の届出と併せて1つの用紙にまとまっています。
サーベイランス強化加算に〇を付けた上で、サーベイランスの参加状況の報告(事業名と参加状況が分かる文書の添付)を行う必要があります。
5.抗菌薬適正使用体制加算の算定要件
抗菌薬適正使用体制加算とは、Access 抗菌薬の適正使用を更に促進する観点から2024年度(令和6年度)の診療報酬改定で新設された加算です。
抗菌薬適正使用加算は患者1人につき月1回限り、5点の算定が可能です。
6.抗菌薬適正使用体制加算の施設基準
抗菌薬適正使用体制加算を算定するには、以下の施設基準を満たした上で届け出を行う必要があります。
抗菌薬適正体制使用加算の施設基準
(1) 外来感染対策向上加算に係る届出を行っていること。
(2) 抗菌薬の使用状況のモニタリングが可能なサーベイランスに参加していること。
(3) 直近6か月における使用する抗菌薬のうち、Access 抗菌薬に分類されるものの使用比率が60%以上又は(2)のサーベイランスに参加する診療所全体の上位 30%以内であること。
引用元:「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和6年3月5日保医発 0305 第5号)
抗菌薬適正使用体制加算を算定するためには、外来感染対策の届出やサーベイランスへの参加が必要なため、外来感染対策向上加算とサーベイランス強化加算を算定していること、その上で上記(3)の条件を満たしていることが前提となります。
7.抗菌薬適正使用体制加算の疑義解釈
抗菌薬適正使用体制加算に関する疑義解釈で主にクリニック(無床診療所)に関係する内容を抜粋してご紹介します*注1。
【疑義解釈(その1)より】
Q. 「A000」初診料の注 14、「A001」再診料の注 18に規定する抗菌薬適正使用体制加算の施設基準における「抗菌薬の使用状況のモニタリングが可能なサーベイランスに参加していること。」は具体的には何を指すのか。
A. 初診料の注 14 及び再診料の注 18 に規定する抗菌薬適正使用体制加算の施設基準においては、診療所版感染対策連携共通プラットフォーム(以下「診療所版J-SIPHE」という。)に参加し抗菌薬の使用状況に関するデータを提出することを指す。
Q. 「A000」初診料の注 14 及び「A001」再診料の注 18 に規定する抗菌薬適正使用体制加算の施設基準における「直近6か月における使用する抗菌薬のうち、Access 抗菌薬に分類されるものの使用比率が 60%以上又は(2)のサーベイランスに参加する診療所全体の上位 30%以内であること。」について、どのように確認すればよいか。
A.診療所版J-SIPHEにおいて、四半期ごとに抗菌薬の使用状況に関するデータの提出を受け付け、対象となる期間において使用した抗菌薬のうち Access 抗菌薬の割合及び参加医療機関全体におけるパーセンタイル順位が返却されるため、その結果(初診料等における抗菌薬適正使用体制加算については診療所版J-SIPHEにおける結果を指す。)が施設基準を満たす場合に、当該結果の証明書を添付の上届出を行うこと。
なお、使用した抗菌薬のうち Access抗菌薬の割合及び参加医療機関全体におけるパーセンタイル順位については、提出データの対象期間における抗菌薬の処方件数が 30 件以上ある場合に集計対象となる。
(引用元:厚生労働省 事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その1)」、医-2)
※ データ提出方法及びデータ受付時期並びに結果の返却時期の詳細については、J-SIPHE及び診療所版J-SIPHEのホームページを確認すること。
(J-SIPHEは主に感染対策向上加算を算定する有床診療所、病院が対象)
・J-SIPHE(https://j-siphe.ncgm.go.jp/)
・診療所版J-SIPHE(https://oascis.ncgm.go.jp/)
Q. 上記の方法により施設基準を満たすことを確認した上で届出を行った場合について、届出後の施設基準の適合性について、どのように考えればよいか。
A. 施設基準の届出を行った場合には、届出後についても診療所版J-SIPHEに少なくとも6か月に1回はデータを提出した上で直近に提出したデータの対象期間における施設基準の適合性の確認を行い、満たしていなかった場合には変更の届出を行うこと。
【疑義解釈(その3)より】
Q. 「A000」初診料の注 14 及び「A001」再診料の注 18 に規定する抗菌薬適正使用体制加算の施設基準において「直近6か月における使用する抗菌薬のうち、Access 抗菌薬に分類されるものの使用比率が 60%以上又は(2)のサーベイランスに参加する診療所全体の上位 30%以内であること。」とされているが、Access 抗菌薬に分類されるものの使用比率は、具体的にはどのように計算されるのか。
A. 各抗菌薬の Access 抗菌薬への該当性(AWaRe 分類における位置づけ)並びに Access 抗菌薬に分類されるものの使用比率に係る診療所版J-SIPHEにおける計算方法については、診療所版J-SIPHEのホームページを確認すること。
診療所版J―SIPHE:https://oascis.ncgm.go.jp/manual/glossary
※注1:疑義解釈の内容は令和6年11月5日時点「疑義解釈(その14)」までの情報となります。
疑義解釈その2、4~14には主にクリニックに関する抗菌薬適正使用体制加算の記載がなかったため、本コラムに記載しておりません。
疑義解釈資料の最新情報は以下のURLよりご確認いただけます。
参考資料:厚生労働省HP「令和6年度診療報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
8.抗菌薬適正使用体制加算の届出
抗菌薬適正使用体制加算の届出は、連携強化加算やサーベイランス強化加算の届出と併せて1つの用紙にまとまっています。
抗菌薬適正使用体制加算に〇を付けた上で、抗菌薬の使用状況について必要事項を記載し、抗菌薬の使用状況のモニタリングを行うサーベイランス事業者が発行する Access 抗菌薬に分類されるものの使用比率及びサーベイランスに参加する医療機関中のパーセンタイル順位がわかる文書を添付すること報告(事業名と参加状況が分かる文書の添付)を行う必要があります。
9.まとめ
本記事では、医療機関・クリニック(無床診療所)向けにサーベイランス強化加算および抗菌薬適正使用体制加算について、2024年度(令和6年度)診療報酬改定の内容を反映してご紹介しました。
先述した通り、サーベイランス強化加算や抗菌薬適正使用体制加算は外来感染対策向上加算を算定していることが前提条件となるため、サーベイランス強化加算および抗菌薬適正使用体制加算を算定するためには、まず外来感染対策向上加算の施設基準を満たすことが必要です。
外来感染対策向上加算についてはこちらのコラムで詳しく解説をしてるため、ご参考いただけますと幸いです。
https://www.credo-m.co.jp/column/detail/hosyu/7139/
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