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【整形外科医院メルマガ2021年7月号】家康の𠮟り方

家康の叱り方

 

 

皆さんこんにちは!
クレドメディカルの中川です。

 

突然ですが、
先生方は「叱る」という行為に対して、
どのような向き合い方を
しておられるでしょうか。

 

―理解してもらいたいという一心で
ついつい感情があふれてしまい、
叱っていると語気が荒くなってしまう先生。

 

―逆に、
叱ると後々スタッフ間で愚痴を言われる、
スネてしまって働いてくれなくなる、
そういったことを恐れる心からか
指摘することを我慢している先生。

 

―はたまた
何を言っても通じないという諦めからか、
もうスタッフを叱ることは控えている先生。

 

これをお読みになっている先生方は
どのタイプに近いでしょうか。

 

必要以上に摩擦を増やすことは
もちろん誰も望んでいないことですが、
逆に必要があるのに
何も指摘できないという組織もまた、
健全とは言いがたいのでは
ないでしょうか。

 

医院の方針の本質に関わる話、
あるいは金銭に関わる話、
またあるいは
ドクター/スタッフの労働意欲に関わる話、
さらには
医院経営を妨げるほどのトラブルメーカーな
スタッフさんに関わる話などなど、
「どうしても今、
これだけは理解してもらわなきゃ困る」
けれど、
「理解してもらう過程の労力を考えると
嫌になってしまう」…。

 

そういった困った話題というのは
どの医院にも多かれ少なかれあるものです。

 

こういった話題にぶつかったとき、
組織を束ねる者として
「叱る」「諫める」という行為を
「いざやらねばならぬ」と思っても、
苦手意識からか、
自分が我慢すれば何とかなると思う
優しさからか、
ためらってしまう先生は
多いのではないでしょうか。

 

先生方もご承知の上ではあると思いますが、
まず前提として、
そもそも「叱る」という行為は

  • 怒鳴る
  • 責め立てる
  • 罵倒する
  • 相手の内面を否定する

というものでは決してありません。

 

「叱る」という行為は
「相手がちゃんと納得した上で、
問題点の是正に前向きに取り組む」
ようになってもらうことが
一番の目標ですから、
怒鳴ったり、
人間性を否定したり、
罵倒したりすることは、
その目標から逆算した時に
必ずしも通らなくてよい道筋、
必ずしも選ばなくてよい手段
であることは
お分かりいただけるのではないかと
考えております。

 

それでは、どのような「叱り方」をすれば、
当事者との関係をできるだけ悪化させず、
それでいて問題解決へ歩を進められる、
そんな理想的なアプローチが
できるのでしょうか?

 

今回は
温故知新、古きに学んでみることと
いたしましょう。

 

戦国時代に終焉を告げ
260年の太平を築いた、
かの徳川家康。
彼は部下を叱ることに関しても
優秀だったという逸話がございます。

 

徳川家康が部下(家臣)の信頼をつかんだ
その叱り方を以下に記載いたします。

 

 

家康の叱り方: 5ステップ

  1.  ミスをした本人、そしてその人と親しい人を呼び出す
  2. いつもより語気を和らげる
  3. まずは今までの功績をたたえて感謝する
  4. そして「今回のミスは君に似合わない」と伝える
  5. 今後もこれまで通りの活躍を期待していると伝える

 

いかがでしょうか?

 

この逸話、ご存じの方も多いとは思いますが、
改めて見てみると、
これを「叱る」と言うには
あまりにもあっさりしすぎている、と
感じられる方も
いらっしゃるのではないでしょうか。

 

しかし、
「ミスがあったこと」は伝えているし、
「改善し、活躍してほしいという意志」
も伝えています。

 

同時に
ミスを「責め立てる」という
空気を出さないよう
「日頃の感謝」とともに
伝えることで
部下自身の納得感、自戒の念を
より強く引き出しているとも
見ることができるでしょう。

 

なにより「人が身動きできない状況」
「逃げ場のない状況」を
作り出さないようにしている工夫が
随所に見て取れます。

 

ちなみに、これと真逆の行為が
「人を人前で叱責する」
という叱り方です。

 

叱っている側からすれば
そこまで思い至っていなかったとしても、
「人前で叱責する」というのは
その人のメンツをつぶし、
必要以上の反発や恨みを
買うことと心得るべきです。

 

もはや
過ちを正す以上の、
余計な効能の方が大きいのでは
ないでしょうか。

 

先生方の時間は有限です。
一人のスタッフのために
いちいち呼び出す時間を設けるのは難しい、
というご意見も
ごもっともではありますが、
5分でも構わないので、
以下のような家康流の叱り方を
取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

新人いびりのひどいスタッフを叱る場合

 

「お疲れ様。
業務終わりに引き留めて申し訳ない。
いつも的確な業務をありがとう。
そうそう、今日も□時の混雑時には
テキパキと診療補助に入ってくれて
とても助かったよ。
本当にありがとう。

 

…さて、
今回ここに来てもらったのはほかでもない、
新人さんの件について、
一度△△さん本人と
話し合っておかなきゃいけないと
思っていたからなんだ。

 

ちなみに新人さんの仕事について、
私はこう考えているけれど、
△△さんはどう思う?…

 

…なるほど、
確かにそういった点においては、
新人さんは
まだまだ足りない部分があるようだね。
新人さんをよく見ていてくれて、
そして正直に報告してくれてありがとう。

 

…だが、私が危惧しているのは
新人さんに対する△△さんの態度を見て、
他のスタッフまでおびえてしまって、
せっかくいつも頑張っている△△さんが
まるで悪者みたいに
思われてしまっていないか?
ということなんだ。
もしそうなら、これは
とてももったいないことだと思うよ。

 

人一倍仕事に真剣で
ちゃんと周りが見える△△さんだからこそ、
根気よく、怒りを抑えて
「できているところを認めてあげる」
ことから指導を始めるのも
ムリなことじゃないと私は思うんだ。

 

むしろ、こういったところで
いらだちの感情をぶつけてしまうのは、
冷静な△△さんらしくない、と
言えるかもしれない。
それくらいもったいないことだと
私は感じているよ。

 

どうだろう、
△△さんに教わりたい、
△△さんについていきたいと
思われるような
△△さんらしい指導の仕方を
試行錯誤してもらえないだろうか。

 

ゆっくりでもいい、
△△さんの能力と経験を生かした、
これまで通りの、これまで以上の
活躍を期待しているよ。
いつも本当にありがとう。」

 

家康の天下統一から420年が経つ現代。
ですが、家康のマネジメント力から、
私たちはまだまだ学ぶべきものが
あるのかもしれません。

 

以下余談ではありますが、
驚くべきことに、
このようにマネジメント力の優れた家康も
若いころはかんしゃく持ちだった、
という記録が残っています。

 

このかんしゃくのせいもあってか、
家康は三河国の領主であった時代に
民から一向一揆を起こされていたり、
三方ヶ原の戦いで武田信玄の背後を襲うも
返り討ちに合い命からがら敗走したり、
といった苦しい人生経験を積んでいました。

 

それを経て、
自分の怒りをコントロールし、
部下を伸ばす叱り方ができるようになり、
天下統一を成し遂げるまでに
至ったのだと考えると、
「人は変わることができる」と
勇気づけられる思いすら抱きます。

 

なかなか「叱る」ということに
踏み出せなかった先生方も、
「叱る」と語気が荒くなってしまう
熱血な先生方も、
先生の雰囲気に合わせつつ、
徐々に、ゆっくりと
スタッフさんとの意見のすり合わせ方、
解決策の糸口の探り方を
見つけていただけることを
祈っております。

 

その手掛かりとして、
この家康の叱り方が
なにかの参考になれば幸いです。

 


今月も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは次回以降の配信をお楽しみに!