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2026.02.16

クリニックに求められるBCPとは

本記事では「クリニックに求められるBCP」経営コンサルタントの柳が医師のために記載した文書です。
より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。

<目次>

  1. BCP(事業継続計画)とは
  2. BCP策定のための基本ステップ
  3. BCPに盛り込むべき共通項目と特殊項目
  4. BCPの策定後に必要な維持管理(BCM)
  5. まとめ


近年、自然災害やパンデミック、サイバー攻撃など、医療機関を取り巻くリスクは多様化・複雑化しています。
特に、地域医療を担うクリニックにおいては、非常時においても診療を継続し、患者さんの健康を守る責任があります。
そこで注目されているのが「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)」です。

1.BCP(事業継続計画)とは

(6) 「医療機関(災害拠点病院以外)における災害対応のための BCP 作成の手引き」等を参考に、医療機関の実情に応じて、災害等の発生時において、当該保険医療機関において患者に対する医療の提供を継続的に実施することを目指すこと、非常時の体制で早期の業務再開を図ること及び患者と職員の安全を確保すること等を目的とした計画(以下この項において「業務継続計画」という。)を策定し、当該計画に従い必要な措置を講じること。また、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うこと。

[経過措置] 令和8年3月31日において現に機能強化加算の届出を行っている保険医療機関については、令和9年5月31日までの間に限り、1の(6)に該当するものとみなす。

中央社会保険医療協議会 総会(第644回) 議事次第 総-2 個別改定項目について(その1)より抜粋

ステップ1:BCP作成の担当者決定

担当者は平常時からBCPの維持管理を行い、定期的な見直しや訓練の企画を担います。

また、災害発生時には災害対策本部のメンバーとなることが想定されるため、意思決定権限を持つ人材を選ぶことが推奨されます。


小規模クリニックの場合:
・院長が責任者となり、事務長や看護師長と協力して作成
・外部の専門家(医師会、コンサルタントなど)のサポートを受けることも有効


中規模以上の法人等の場合:
・災害対策委員会などの常設組織を設置
・各部署(診療部門、看護部門、事務部門、設備部門など)から代表者を選出
・定期的な会議を開催し、進捗を管理


ステップ2:既存の災害マニュアルまたはBCPの読み直し

既に災害マニュアルやBCPが存在する場合は、その内容を詳細に読み直し、現状との整合性を確認します。

「作成したまま放置されている」ケースは非常に多いですが、作成から3年以上経過している場合は、大幅な見直しが必要な可能性が高いです。


<チェックすべきポイント>
・記載されている連絡先は最新か(退職したスタッフの情報が残っていないか)
・施設のレイアウトや設備配置は現状と一致しているか
・電子カルテシステムなど、新しいシステムの導入が反映されているか
・近隣の避難所や提携医療機関の情報は正確か
・法令や指針の改正が反映されているか


ステップ3:BSPの共通項目・特殊項目の中から自院に必要な項目を抽出

BCPに盛り込むべき共通項目(全ての医療機関に必要な項目)と特殊項目(施設の特性に応じた項目)の中から、自院に必要な項目を抽出します。
このステップでは、施設の地理的条件、診療機能、地域における役割などを十分に考慮する必要があります。
「標準的なテンプレートをそのまま使う」のではなく、自院の実情に合わせたカスタマイズが重要です。


ステップ4:「医療機関におけるBCPチェック項目」などを用いて自院のマニュアルの不足分をチェック

「医療機関におけるBCPチェック項目」などのツールを用いて、自院のマニュアルの不足分を体系的にチェックします。

>厚生労働省によるBCPチェック項目はこちら
https://www.mhlw.go.jp/content/000955050.pdf


<主なチェック項目カテゴリー>
①組織・体制:災害対策本部の設置基準、指揮命令系統、役割分担
②ライフライン:電気、水、ガス、通信の代替手段
③人的資源:職員の参集基準、シフト体制、メンタルヘルス対策
④物的資源:医薬品・医療材料の備蓄、食料・水の備蓄
⑤情報管理:被災情報の収集・伝達方法、EMISへの入力体制
⑥診療継続:優先業務の選定、診療縮小の基準
⑦外部連携:他医療機関との協定、行政との連携
⑧教育・訓練:研修計画、訓練の実施頻度


ステップ5:抽出した項目を自院の事情に合わせたものに変え、計画の本体とする

誰が読んでも同じ行動ができるレベルまで具体化することが重要です。

5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を明確にすると良いでしょう。


<ポイント>

・判断基準:数値化できる客観的な基準(震度、警報レベル、浸水深など)
・責任者:誰が判断・指示するか、不在時の代理者は誰か
・連絡方法:電話、メール、SNS、無線など、優先順位と代替手段
・行動手順:ステップバイステップの具体的な手順
・判断のタイミング:いつまでに判断するか、どのタイミングで見直すか


ステップ6:視覚的にわかりやすくするために必要に応じて図表を作成

視覚的にわかりやすくするために、必要に応じて組織図、フローチャート、タイムラインなどの図表を作成します。


<図表を作成すべきものの例>
・組織図:災害対策本部の指揮命令系統を視覚化
・フローチャート:意思決定プロセスを矢印で示す(例:「震度6弱以上」→「災害対策本部設置」→「被災状況確認」→「診療形態決定」)
・タイムライン:発災からの時系列での優先業務を表形式で整理
・施設レイアウト図:避難経路、災害対策本部の設置場所、備蓄倉庫の位置を図示
・連絡体制図:職員連絡網、外部機関との連絡ルートを図示
・ハザードマップ:施設周辺の浸水想定区域、土砂災害警戒区域などを色分け


ステップ7:リストや帳票類などを資料としてまとめる

BCPの遂行時に実際に使用するツールは「資料編」としてまとめます。これらはBCP本体とは別に整理し、すぐに取り出せる場所に保管しましょう。


<資料の例>
①職員連絡網:氏名、携帯電話、自宅電話、メールアドレス、住所、最寄り駅、徒歩通勤可能距離
②外部機関連絡先:消防、警察、保健所、医師会、提携医療機関、ライフライン事業者、医薬品卸など
③患者リスト:氏名、連絡先、主病名、処方内容、医療機器の使用状況、搬送方法(独歩/担送/護送)
④医薬品・医療材料リスト:品名、備蓄量、保管場所、使用期限
⑤医療機器リスト:機器名、設置場所、非常用電源接続の可否、予備バッテリー
⑥備蓄品リスト:食料、飲料水、燃料、日用品の品名・数量・保管場所
⑦アクションカード:職種別・役割別の具体的行動指示書
⑧災害時標準診療録:電子カルテが使用できない場合の紙の診療記録様式
⑨被災状況報告書:各部署が災害対策本部に報告するためのフォーマット
⑩EMIS入力マニュアル:広域災害救急医療情報システムへの入力手順


ステップ8:表紙(タイトル)、目次、索引を作成して作成者、作成日を付す

表紙(タイトル)、目次、索引を作成し、作成者と作成日を明記することで、BCPが正式な計画書として位置づけられます。


ステップ9:作成したBCPを定期的に見直し、記録を残す

作成したBCPは、諸事情の変化や訓練による検証結果などにより定期的に書き直し、その記録を残します。

3.BCPに盛り込むべき共通項目と特殊項目

■共通項目

すべての医療機関のBCPに盛り込むべき共通項目は、基本方針、事前準備体制、発災直後の業務遂行計画、診療維持計画、災害モードの収束・通常診療への復帰の5つに分類されます。

基本方針:対象とする災害の種類、想定される被害、失われる診療機能、地域から求められる役割など

事前準備体制:平常時の災害対応組織、災害対策本部の設置基準、優先業務の設定、タイムライン作成、外部機関との連携、教育と訓練など

発災直後の業務遂行計画:災害対策本部の設置、被災状況の確認、診療形態の決定、優先業務の実施

診療維持計画:外部供給の確保や受援体制を整備

災害モードの収束・通常診療への復帰:段階的な復旧基準を設定


特殊項目

医療機関の特性や立地条件によっては、共通項目に加えて特殊な項目をBCPに盛り込む必要があります。

自院の特殊性の分析:地理的立地条件、地域から求められている診療機能継続の重要性、建物の耐震性など

特殊性から求められる対応:応急危険度判定、スタッフの避難体制、要受援状態の発信体制、避難計画など

4.BCPの策定後に必要な維持管理(BCM)

BCPは一度作成すれば完成ではなく、継続的な維持管理(BCM: Business Continuity Management)が必要です。

BCPを効果的に機能させるためには、組織的な維持管理体制が不可欠といえます。

具体的には、定期的な研修や訓練を行うことで、BCPをクリニック内の文化として浸透させる取り組みなどが必要でしょう。

課題となる部分に対して継続的な改善を図ることがBCPの目的でもありますので、BCPの策定後はBCMの実践も徹底することが推奨されます。

5.まとめ

医療機関におけるBCPは、災害時にも医療サービスを継続し、地域住民の生命を守るための重要な計画です。

効果的なBCPを策定するためには、自院の特性やリスクを正確に把握し、実現可能で具体的な計画を立てることが不可欠です。

そして、定期的な訓練を通じて計画を検証し、継続的に改善していくことで、真に機能するBCPとなります。

BCPは「作って終わり」ではなく、訓練と見直しを繰り返しながらブラッシュアップしていくものです。

BCM(事業継続管理)の視点を持ち、平常時から組織的にBCPを維持管理する体制を確立することが、災害対応力の向上につながります。

災害は予測できませんが、準備はできます。

医療機関が地域における最後の砦としての役割を果たし続けるために、BCPの策定と維持管理に今すぐ取り組むことが求められています。

一人ひとりの医療従事者がBCPの重要性を理解し、自分の役割を認識することで、組織全体の災害対応力が高まるのです。


本コラムが、日々の診療およびクリニック経営の一助となれば幸いです。
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 参考:【堀内分担研究添付資料1】-医療機関(災害拠点病院以外)における 災害対応のためのBCP作成の手引き-(https://www.mhlw.go.jp/content/000955005.pdf


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