一つには、患者さんにとって耳鼻咽喉科の治療内容を他院と比べにくいことが挙げられます。
例を挙げて説明しますと、家電製品を購入する時は、各社の製品の違いを自分で調べて、自分が本当に欲しい製品を
選択することができます。さらに現在では、自宅にいながら各店舗毎の価格を調べて一番安い店舗で購入できます。

一方耳鼻咽喉科の診療では、一般の患者さんにとってしてみると、それぞれの医院で受けられる治療を比べることは困難です。
その結果、患者さんは自宅や勤務先に一番近い医院を選ぶようになります。
しかし、患者さんがご家族や友人、知人から
〇〇医院は待ち時間が少なくていいよ。
〇〇クリニックの先生は丁寧だし、優しいよ。
と“口コミ”を聞いていればどうでしょうか?
自宅や勤務先から一番近い医院で無かったとしても、無理の無い範囲でその“口コミ”を聞いた医院へ行くのではないでしょうか?
このように医療業界においては、診療内容を一般の患者さんが理解しづらいからこそ“口コミ”の重要性が増すのです。
ここで口コミの重要性がわかるデータを紹介致します。

上のデータは1日の平均来院患者数が同程度の医院において、新規患者の来院経路の内口コミの比率が50%のA医院と、29%のB医院を比較し、競合医院ができた半年後のレセプト枚数を測定したものです。
御覧頂いてわかるように、口コミ比率の高いA医院は近隣に競合医院ができてもレセプト枚数が増加していますが、口コミ比率が低いB医院はレセプト枚数が減少しています。
耳鼻咽喉科における“口コミ”の重要性が如実に現れたデータです。

口コミを起こすためのマーケティング

これまで耳鼻咽喉科における口コミの重要性を説明してきましたが、先生方の中には口コミは患者さんの自発的な行動だから狙って起こせるものでは無いとお思いの方や、良い治療を行っていれば自ずと口コミが起こるから地道に適切な医療を提供すれば良いのだ。とお思いの先生がいらっしゃるでしょう。
それらのお考えは正しいです。

しかし、マーケティングによって意図して良い口コミを起こす方法があることも事実です。
当サイトの耳鼻咽喉科医院における広告戦略のページでも少し触れましたが、
・ポケットティッシュ
・紹介カード
・医院案内
などのツールを使用することで、口コミを増加させることができます。
人は自分の期待を超えたサービスや商品の提供を受けた時に、その体験を話したくなるという性質を持っています。
例示しますと、ある人が風邪だと思って病院に行ったところ、

1,丁寧に診察をしてくれた先生から笑顔で「大丈夫ですよ。風邪ですがもうすぐ治ります。安心してくださいね。」と言われた。
2,簡単な診察で先生からは「薬出しときますね。」としか言われず、会計も待たされた。

これらのような場合、良い悪いの違いは有りますがどちらも期待を超えた体験となるのでその体験を誰かに話したくなります。
この話が周りの方に伝わることで口コミが起こります。勿論言うまでもなく、①は好意的な口コミ、②はネガティブな口コミとして広がります。
口コミの発信者は、①も②も同じくらい印象に残り、同程度の期間記憶に残ると思われます。
一方口コミの受け手側は、②のネガティブな口コミが強く残りやすいと言われています。
なぜなら人は損失回避に強い関心を持つためです。

上記のような2種類の口コミを聞いた時に、嫌な体験をしたくないという感情からネガティブな口コミが強く印象に残り、自分が風邪になった時はその病院には行かないようにしようと記憶に留めます。
好意的な口コミを聞いた場合は、次に自分が風邪になった時に行こうとその時点では思いますが、実際に風邪にかかった時は多くの方が忘れてしまっています。
口コミの発信者に、チラシの入ったポケットティッシュや医院案内などのツールを渡していると、周りの方に話しをする時にそれらのツールを渡してくれることがあります。
ツールをもらった口コミの受け手側は口コミの内容を忘れてしまっていたとしても、ツールを見て思い出してくれますので、来院の確立は高くなります。
そのためにも、ツールは手元に置いておきたくなるもの、すなわち手元にあって役に立つものを心がけて作成することが大切です。