その中にあって、現在の先生方の耳鼻咽喉科医院で
「これだけは他の耳鼻咽喉科に負けない、ここは確実に秀でている」
という絶対的(あるいは相対的)な強みをお持ちで、なおかつしっかりと患者さんやスタッフに伝えているところはどれだけあるでしょうか?

マーケティングの世界では、これを「USP(Unique Selling Proposition))といいます。

例えば吉野家のUSPは
「早い・安い・うまい」

ドミノピザの発展期のUSPは
「30分以内にアツアツのピザを届けます できなかったら無料です」
(後に「できなかったら無料です」の部分が急いで配達を促し交通事故を助長するとして変更されましたが)となります。

このようにシンプルなメッセージで他との差別化を図れる、あるいはメッセージにせずとも、その特徴が患者さんに伝わる状態になればそのUSP(医院独自の強み)に惹かれて集まる患者さんが増えてくるため、競合ができたとしても、他院に患者さんをとられにくくなるのです。

弊社のクライアントに数年前に競合医院が近くにできたにも関わらず、患者数が減ることなく、むしろ増やし続けている耳鼻咽喉科医院があります。

この耳鼻咽喉科医院は「初診比率が高く、検査はしっかり行うので、自己負担はちょっと高め。しかしなるべく通わせない、診察では信頼関係を築いて説明を理解できるまでしっかりと行い、様々な選択肢からの治療を検討する」
といった診療スタイルで既に広範囲の住民にそのスタイルが浸透しているのです。
(実際に上記のままの文章をUSPとして掲げている訳ではありませんが、患者さんに伝わりやすい形に置き換え、上記の強みをさらに高める努力を続けていただいています。)

そうした姿勢が伝わることで、
①そもそも近隣でも(1回あたりの診療単価はやや高いため)「安かろう・早かろう・どこでもいい」の患者さんはあまり来なくなっている
②一方で、評判や口コミをたどって、広い診療圏から患者さんが来院している

そのために近隣に競合ができたとしても、既存の患者は「近所」という理由ではなく「指名」「選択」してこの医院に来院している方が多い為、浮気をされる可能性が少ない、ということなのです。

それでは「医院独自の強み」(USP)はどのようにして見出せば良いのか?

『人はモノやサービスを買う(利用する)のではなく、人はそれを通しての「結果・ソリューション」を買う(利用する)』という言葉があります。

これを耳鼻咽喉科に当てはめると、患者は診療に対してお金を払っているのではなく、患者は診療を通しての「症状の改善や安心」を買う。と言い換えることができます。

あるいは細かい話では患者は予約システムに価値を感じているのではなく、
患者は予約システムを通じての待ち時間の短縮に価値を感じていると言い換えられます。

「そんなのわかってるよ。当たり前のことじゃないか!」
という声が先生方から聞こえてきそうですね。

しかし、多くの先生が実際にはこのことを理解した上で自院の強みを見出すことができていません。患者さんが望んでいる、「結果・ソリューション」の部分にいかに「集中して」考えらえるかが自院の強みを発見する契機となります。

各々の医院の強みを発見していただくために、下記に「考えて頂きたい質問」と、「強みとなりやすい差別化要素」を挙げました。

「考えていただきたい質問」
①:周辺、あるいは県内の患者はどんな方が多くて、その中で貴方が患者として来ていただきたい年齢層は?
②:①の人たちは何を必要としているのか?
③:①の人たちはなぜ②を求めているのか?
④:どのようにして、そしてなぜ貴方は他の誰よりも②を他院に比べて良く提供ができそうか?

・・・上記の質問に順に答えてみてください。
④番目の答えが凡そ貴院の強みといえると思います。

また、耳鼻咽喉科で強みとなりやすい要素として、
「強みとなりやすい差別化要素」
①診療そのものの精度・治癒率
②場所・立地
③費用
④頻度
⑤ソリューションの豊富さ
⑥検査の種類の豊富さ
⑦接遇やサービスの質
⑧待ち時間や診療時間(長い短い)
⑨説明力や患者教育力
⑩ペインレス(無痛)
⑪ハード面(衛生的・新しい)
などが挙げられます。

まずは上記にて強みを明確化し、あるいは今まで自院の強みだと思っていた部分を再度点検し、本当にそれが患者さんにとっても強みなのか?を確認してみてください。

例えば
「うちの医院は患者さんに満足度の高い診療を提供している」
これはまだまだ掘り下げられていない強みの典型例です。
・どのような部分で満足が高いのか?具体的には何か?
・実際に貴方が来てほしいと思っている患者さんはその満足を求めているのか?
(それはなぜか?)
・他の医院と比べて本当に満足なのか?
等々を深堀りしていく必要があります。

できるだけ細かくすることによって、差別化し、打ち出しやすい強みを先生自身が
気づくことができると思います。