M&Aとは? ~無床診療所における事業承継とM&A~
ここ数年、開業医の先生方から、事業継承やM&Aに関するご相談の機会が急激に増えています。
少し前まで、医療機関の事業承継といえば「子どもに継がせる」「院内の勤務医に譲る」といった選択肢が中心でした。しかし現在は、第三者にクリニックや医療法人を引き継ぐM&Aという方法が、現実的な選択肢として広く認識される時代になっています。
本コラムでは、医療機関のM&Aを専門的に扱う立場から、M&Aとは何かを、できるだけわかりやすく解説します。
■M&Aとは何か
M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併・買収)の略称です。
一般企業の世界では、会社同士が統合したり、ある会社が別の会社を買い取ったりすることを指します。
医療機関の文脈でのM&Aは、少し意味合いが異なります。
多くの場合は、
「院長が引退・世代交代する際に、第三者にクリニックや医療法人を引き継ぐ仕組み」
を指します。
つまり、医療機関におけるM&Aとは、廃業ではなく“引き継ぐ”ための事業承継の手段なのです。
■なぜ今、医療機関でM&Aが注目されているのか
医療機関M&Aが急増している最大の理由は、後継者不足です。
厚生労働省の統計でも、開業医の平均年齢は年々上昇しており、60代・70代で現役の院長も珍しくありません。一方で、子どもが医師にならない、あるいは別の診療科を選ぶケースも増え、親族承継が成立しにくくなっています。
さらに、医療を取り巻く環境も変化しています。
- 診療報酬改定の複雑化
- 医療DX(電子カルテ、オンライン資格確認など)の対応負担
- 看護師・医療事務の採用難と人件費高騰
こうした要因により、「この先10年、今の体制で続けられるだろうか」と不安を抱く院長が増えています。
その結果、M&Aを「引退時の出口戦略」としてだけでなく、「経営の選択肢」として検討する時代に入ったのです。
■医療機関のM&Aと一般企業のM&Aの違い
医療機関のM&Aは、一般企業のM&Aとは大きく異なります。
最大の違いは、医療は許認可事業であり、公共性が極めて高いという点です。
- 保険医療機関の指定
- 医療法人の認可
- 管理医師の要件
- 地域医療への影響
これらを無視して単純に「売る・買う」ことはできません。
また、患者さんやスタッフの存在も極めて重要です。
単なる「箱(建物)」や「設備」ではなく、信頼関係と診療実績そのものが価値になります。
このため、医療機関M&Aには、
「医療制度」と「経営」の両方を理解した専門家が不可欠です。
■医療機関M&Aの主な方法
医療機関の事業承継には、主に次の3つの方法があります。
- 親族内承継(子どもなど)
- 院内承継(勤務医への承継)
- 第三者承継(M&A)
近年増えているのが第三者承継(M&A)です。
また、医療法人の場合は
- 持分あり医療法人
- 持分なし医療法人
によって、スキームや税務、譲渡方法が大きく異なります。
この違いを理解しないまま話を進めると、後で大きなトラブルになることもあります。
■M&Aによる事業承継のメリット
医療機関M&Aの最大のメリットは、廃業を回避できることです。
廃業すれば、
- 患者は通院先を失い
- スタッフは職を失い
- 地域医療は空白地帯になります
M&Aなら、
- 診療を継続できる
- スタッフの雇用を守れる
- 院長は引退後の生活資金を確保できる
という三方良しの形を作ることができます。
■成功する医療機関M&Aのポイント
M&Aを成功させる最大のポイントは、早めに動くことです。
「まだ元気だから」「今すぐ引退しないから」と先送りにすると、
- 財務が悪化して価値が下がる
- 後継候補が見つからなくなる
- 選択肢がなくなる
という事態になりがちです。
また近年では、クリニックの集患力や院内設備なども評価に影響します。
患者数が安定している、最新の設備、サービスが整っている医院ほど、買い手から高く評価されます。
■M&Aは“最後の手段”ではなく“経営戦略”
M&Aは、引退直前に慌てて考えるものではありません。
将来の選択肢を広げるために、理解しておくべき経営戦略です。
少しでも「いつか…」と感じたときが、情報収集の最適なタイミングです。
医療機関のM&A・事業承継について、「まだ売るつもりはないが話を聞いてみたい」という段階からでもお気軽にご相談ください。
